5月13日になります。新百合ヶ丘の昭和音楽大学で行われたピティナのピアノステップに、小学4年の娘が初参加しました。
娘は4歳から私がずっと教えてきました。アメリカで一度、私の知人のピアノの先生の発表会に出してもらって「威風堂々」を私と連弾したことがありますが、それっきり発表会らしいことには縁がありませんでした。私が教えていて、生徒も少なくて、発表会もしていないので、機会がなかったのと、日本語の勉強で忙しくてピアノを弾く気力がなかったのですね。
帰国して1年5ヶ月、ようやく日本での生活も落ち着いて、ピアノも毎日30分程度練習できるようになりました。
しかし去年のいまごろは、教本を地道に譜読みしていたら、小学3年生でもアキピアノ教本の2巻が終わらない状況で、譜読みが嫌い。どうしたものかと悩んでいました。
昨年の夏、ますこしょうこ先生が送ってくださった発表会プログラムをみたら、小学3年生、4年生は、もうブルグミュラーとか弾いているのですね。アキピアノ教本2巻って、バイエルでいうと上巻のおわりから下巻の最初ぐらいでしょうか。ブルグミュラーなんて当分先、と思っていたのですが…
アラベスクを耳コピで特訓してやろう、となぜか思い立ちました。
「どう?」と弾いてみせたら、「この曲なら弾きたいな」と娘がいったのです。
まずは右手4小節ぐらい耳コピさせます。虫食い状態で、私が大半を弾き、娘は弾ける部分だけ入れていきます。何度も通すうちに、「あ、ここは弾ける」という場所が増えていくわけです。
でも、中間部に行くまで、どれぐらいかかっただろう。1ヶ月以上はかかりましたね。
しかも、左手の和音が微妙に変に覚えてしまったりとか、リズムが変だったりする箇所が出てしまいました。
最初は「違うでしょ!! 変な音弾かないでよ!!! 気持ち悪い!!!」とぶちきれていたのですが、だんだん私もあきらめの境地になり、ま、いっか…外堀から埋めれば、と悟りまして、気に入らないことは、連弾しながら私のパートとして聞きながら覚えさせるという手法で、ついにリズムや音も全部譜読みできました。
同じようにして、後藤ミカ先生が「素直な心」をサンバにアレンジした「素直にはずんでカーニバル」も、マスターしました。といっても右手だけなんですが。これも伴奏が楽しいから好きみたいで、かったるそうにゴロゴロしているときも「…連弾なら、やる」といって、私が前奏を弾きはじめると、ピアノのところにダッシュする形でその日の練習が始まる日々。
そんなこんなで今年の2月、3月には、だいたい仕上がっていましたので、春休みにステップに申し込みました。そして春休みに一度、多喜先生に聞いていただき、拍子感が問題だと気づきました。特にアラベスク。速くなったり遅くなったりジェットコースター状態なのでした。最初の部分は、慣れてきたから速く弾けるからものすごいスピードでぶっ飛ばす。しかし中間部になると遅くなっちゃうんですね。
拍子感が問題だと気づいてからは、メトロノームで特訓しまくりました。なんだかもう嫌気がさすぐらい「ちょっと速すぎ!」「遅れないで!」「お母さんの手拍子ちゃんと聞いて!!」(私)「いいの、これで!!」「聴いてるもん、ちゃんと!!!」(娘)とバトルが発生しておりました。すると息子まで、娘が暴走すると「速過ぎだよ!!」と叫んだりとか(しかし息子の指摘はいつも正確でした)…どういう紆余曲折でよくなったのか今思い出しても混乱していますが、春休みからステップ本番までのあいだ、強弱とか他のことはいっさい我慢して、テンポのことだけをひたすらやっていたことは確かです。
ステップ直前の1週間になって、ある日、暴走しないで、落ち着いたテンポで「アラベスク」を娘が弾き始めました。なんか、テンポが安定しているじゃないですか。
「どうしたのーーーー!!!!???? 今のすごくよかったよーーー!!!」
「今日ね、体育があって、疲れてたから、ゆっくり弾いたの」
「…疲れてたからゆっくりだったの?…」
「うん」
「なんでもいいや。とにかく今の感じで弾けばばっちりだから!!!!」
「へー」
そんなわけで当日。コメント欄には「テンポがかわらないで弾けるように」「連弾はうまく合うように」「はじめてのステップ、がんばります」ということを書きました。あとで多喜先生に聞くと、このコメント欄で、今回のステップで本人の目標をアドバイザーに伝えるとよいそうです。初めての出場だとか、何をポイントに練習しているのか、などなど情報があれば、それに対して書いてもらえるということでした。
緊張はしていなかった娘ですが、待っていて聴いているのに疲れた様子でした。演奏のほうは、アラベスク、無事にスタートしましたが、中間部に入ったところで、ミーシドーラといくところを、レーラシーソと、ポジションが1音下がってしまい、3回やり直しても小指がレのところからスタートしてしまいます。うわああと思っていたら、4回目で、ミーシドーラと弾けて、先に進めました。ひえええよかったよー。あとで多喜先生にうかがいましたが、とまって立ち往生してしまうと合格にしてもらえないそうです。自力で戻って最後まで弾いたので、普段はちゃんと弾いているんだろうなと推測して合格になったのでしょう、ということでした。
アラベスクを弾く子がほかに2人もいました。ひとりはちょっと失敗、もうひとりは私の理想とするような見事な演奏をしてくれて、もう1曲はけっこう難しいものを弾いていました。あとで娘は「ひとりはうまくいかなかったけど、もうひとりはすごくうまかったよねえ。お母さん、ああいうふうに弾いてほしいんでしょ?」。多喜先生によると「そうそう、それそれ! それが一番の勉強になるのよ!!」…いやホント。私がくどくど、速過ぎるだの強弱がどうのというより、同年代の子がいい感じに弾いているのを聴くのが一番いいですね。
連弾のほうは、アクシデントもなく終わりましたが、どうも娘の音が小さかったなー。伴奏を、弱く、しかも躍動感のあるリズムで弾くのが、むずかしかったです。講評には「ふたりの音が合っていない」とのお言葉もあり、そうだな、拍単位では合ったけれども、厳密にはまったく合ってないなと苦笑。
でもとりあえず、評価はAとBで、合格の金色のシールがパスポートに張られていました。「超うれしい!!!」と、娘はそれはそれは喜んでおりました。このパスポートっていうのが、自分ががんばった記録として、すごく大事なんですねー。
帰りの電車。
「疲れたねえ」
「すごく疲れた」
といいながら、「でも、合格してよかったねぇ」とニコニコしていました。
「Sがもらえたらいいのにねえ」
「1日どれぐらい練習しなくちゃいけないの?」
「1時間ぐらいかなあ」
「えー大変。いいよAとかBで。合格にはかわりないもん」
「そりゃそうだ!!(笑)」
年に2回ステップというのが、多喜先生のおすすめスケジュールなんだそうです。夏ごろまでにまた曲が仕上がったら、秋にでも出ようかな。連弾は疲れるので今度はパスしたいとか思ってしまいますが…どうしたものか、考え中です。