先日、ピティナのステップ説明会でお会いした多喜靖美先生から、「いちどお話を聞きたいので、いらっしゃいませんか」というありがたいお誘いをいただき、お宅に伺ってきました。
多喜先生といえばピティナでは知らぬ人はいない有名人。とはいえ普通の音楽ファンは知らない方もいらっしゃるかもしれません。ひとことで言えば、コンクールにいっぱい生徒さんを入賞させているすばらしい指導者。ものすごくあたたかく、包み込んでくださるような雰囲気の先生。アンサンブルや室内楽、朗読とピアノの組み合わせのコンサートに力を入れていて、講座もたくさん開いていらっしゃいます。
これまで、すばらしい先生に取材させていただく機会はたくさんあり、はぁ、私もこうした先生のところでピアノをやり直したいなあと思うことはたびたびありました。しかし、才能のある生徒さんたちがたくさんいらっしゃるのだから、貴重な先生のお時間を私などが占める資格もないしね…と思っていました。
多喜先生もそうした素晴らしい先生のおひとりです。ただ、ピアノの先生が、たくさんレッスンに通っているとのこと。えっ、それじゃ私みたいな人も聴いていただける可能性が?
とは思いつつも、迷っていたところに、先生からお声をかけていただき、すっ飛んで行きました。
先生は、私がチェルニーの本を出しているというのをインターネットでごらんになり、興味を持って下さいました。で、あれこれお話したあと、「ちょっと遊びません?」とおっしゃる。ベーゼンとスタインウェイの並んだレッスン室で、私はベーゼンのほうに座らせていただきました。
でてきたのはチェルニー30番の楽譜。
とりあえず弾いてみましょう。
ええええー!!????
年末で、初見なんてしばらくまともにやってなかったから、目がチカチカしました。
しかし先生がスタインウェイのほうで、即興でオケみたいな感じであわせてくださるんですよ。
しかしインテンポで演奏されているので、こっちのテンポがおいつかないー!
こうなったら右手だけだ!!
読みそこなったところは飛ばして、音楽の流れを大事にしながら、先生と合わせていきます。
ふわんとして、立体的で、オーケストラみたいな音になりました。
流れていく音楽。盛り上がり、息をひそめる。そんな表情をつくっていく。
チェルニーを弾いていて、音楽として、面白いなと、生まれて初めて思いました。
エッシェンバッハが弾くチェルニーのCDを聴いて、すごくきれい! と驚いたけれど、そこに自分がタッチできるとは思ってもいなかった、なのに、あのエッシェンバッハのやっていたような世界に自分がいま来ている! 譜読みも完全でない初見で、右手だけで、ボロボロなはずなのに、いったいなぜ、こんなに音楽していて、楽しいの!?
これぞカルチャーショックでした。
すごい…。
この先生のところで、チェルニーをやり直したいと思いました。
ピアノの先生も含め、生徒さんたちは、チェルニー100番を中心に攻めているんだそうです。弾きながら分析もして、曲をトータルにとらえていくのに、チェルニーだとわかりやすくて簡単なんだとか。確かに。
多喜先生は、私のように、専門教育は受けたけれど、ピアニストを目指しているわけでもなんでもない大人を、快く受け入れてくださっています。
ということで、今、レッスンに向けて、チェルニー30番をやり直し中です。
すごく楽しいんですね、これが。やはり譜読み的に、ある程度ゆとりが持てるのと、テンポをあげて練習できるのと、全体の構成がよくわかるのと、どういう練習なのかわかる、だから面白いんでしょう。
これが50番のうしろのほうのやり直しとかだったら、いろいろな意味でしんどくて、たぶん楽しくないと思います(爆)。
標準版ピアノ楽譜 チェルニー30番 New Edition 解説付
- 作者: 末吉保雄,上杉春雄
- 出版社/メーカー: 音楽之友社
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