10月のイエロージャケッツに続いて、オークランドのyoshi'sまでライブを聴きに行ってきました。今回はピーセス・オブ・ア・ドリーム(以下PODと略)です。
編成は、キーボード2台、ベース、サックス、ドラムの5人。
そのなかでPODのメンバーはドラムのカーティス・ハモン、キーボードのジェームス・ロイド。そしてレギュラー・サポートがサックスのエディ・バッカス。
ほかのふたり、キーボーディスととベーシストはサポートメンバーで、残念ながら名前がよく聞き取れませんでした。
曲目は、最新作のピロー・トークからがほとんど。FMでかかりまくっているヒット曲「フォワード・エモーション」が、まず1曲目にきました。日本のフュージョンで育った私の感覚としては、うーん、この曲って、本田・和泉さん時代のスクェアだといわれても違和感ないなぁ…。サックスがメロディで、メロディアスで、ファンキーなんだけど繊細で上品な風味のあるドラム。スクェアみたいな音楽って他にないのかしら、と昔つよく思ったものですが、あるんですねえここに。ようやくここまでたどり着いた、という感じ。
CDでは特にテクニシャンというより音楽の心地よさが印象に残っていましたが、こうしてライブで見ると、いや、カーティス・ハモンのドラムがめちゃくちゃうまいので呆然。彼らの曲は基本的にミドルテンポの8ビートファンクです。「ツーチッツッツッ」というハイハットワークは生き物のように繊細でみずみずしく、リムショットがまたスコーンとなんともいえない音色で鳴る。そういった各パーツが、それぞれメロディアスで美しくエネルギッシュで、もうドラムだけで他の楽器は入ってこなくてもいいよ、と思ってしまったほど。いやもう惚れました、この人のドラムに。あっちなみにドラムはヤマハ使ってました。
そしてキーボードのジェームス・ロイド。この人はピアノの音を多用してましたが当然ながら生ピアノは使わずキーボード、ヤマハのモティーフを下段、上段にコルグの2台重ねでやってました。基本的にプレイは見せびらかし系でなくて、作曲のときにやりたいことはだいぶやっちゃっていて、トータルで心地よいサウンドを作るんだという姿勢が伝わってくるような演奏でした。アドリブなんかを聴いていると、16分音符の難しいけれど絶妙なタイミングに「どうだ!」といわんばかりに和音をじゃん、と短く鳴らすようなプレイやら、派手な同音連打などが印象に残りましたね。長く伸ばすメロディはサックスに任せて、ピアノはリズム楽器ですよとでもいいたげに。
中盤には黒人女性シンガーが出てきて「Song for you」など3曲歌っていきました。またこの人が声量はすごいわ、音域は広いわで、めちゃくちゃうまくて圧倒されます。地声をぐいぐい響かせたり裏声をふわっと使ったり、高い声を地声で出してみたり、それはもうすごい表現力でした。
お客さんを楽しませる演出もいろいろやってました。サックスの人が1分? 2分? おそらく循環呼吸でなければ不可能と思われる超人的な長さで1音を伸ばし続け、拍手喝さいを浴びたり、キーボードのジェームスが鍵盤を弾きながらキーボードの向こう側に移動して、反対側からアドリブを弾き、目隠しをされてそこから弾きながら歩いて元のポジションに戻ったりとか、そういうサービス精神はスムースジャズのライブなんですね。ヴォーカルが入るのもそうだし。
ジョージ・デュークもそうなんですけど、PODのおふたりはとても素敵だけど、ルックスで売って女性にきゃあきゃあいわれるようなタイプのアーティストではないから、セールス的には不利なところがあるのかもしれないし、だから日本では露出が不足気味かもしれません。でも彼らの音楽は気分をゴージャスでうきうきしたものにしてくれる極上のものです。この夜のライブ会場は満員で、特に男女比・年齢にかたよりなく、人種的にはステージ上も全員黒人だったせいもあり、お客さんも黒人がやや多かったかな? よい意味で、純粋に音楽を楽しみたい人が集まっていたように感じられました。