私や娘は、親子ともにコンペにはまったく縁がなく、出たいという気もないのですが、コンペに出なくても勉強になるから! ということで、セミナーに行ってきました。
まず、バロック・古典・ロマン・近現代の4期の分かれ目はどこにあるのか? というお話。
ピアノ以前=バロック
ピアノ以後=古典
ベートーヴェン以後 ロマン
パリ万博以後 近現代
というような分け方を提案していらっしゃいました。
それとあわせて、音楽に影響を与えた社会における重要な発明として、
印刷された楽譜 → 作曲家という職業が成立
機関車・自動車 → スピード感がまったく変わってくる、移動が容易になる
レコード →繰り返し聞かれることを前提とした音楽へ
という点をあげていらっしゃいました。面白いですね。
その後、コンペの課題曲から演奏してくださいました。8分の5拍子「たいまつの踊り」は、12345、12・123,1.12.12、など、5拍子の分かれ方がバリエーション豊かで難しいとおっしゃっていましたが、面白い曲でした。ミュルゼルの曲は「8分音符のスラーのかけ方が左右でずれていて難しい」のだとか。これもなかなか素敵でした。プロコフィエフの「マーチ」も面白かったですね。
拍子感がいかに大事か、ということは、私もレッスンのなかでもたびたび指導いただいています。ミスが多少あってもいいから、拍子感をきちんとキープする、感じる、流れる、ということがとにかく重要。いい音楽であるための絶対条件なんでしょうね。
8分の3拍子は、4分の3とは違って、1拍子であるというお話もありました。8分の3、8分の6、4分の3、4分の2、4分の4、それぞれ違った流れを持っています。でも、案外それをきちんと表現するのは難しいということで、たとえばブルグミュラーの「アラベスク」。2拍子の波になっている演奏と、1拍目も2拍目も同じような強さになっている演奏を実演してくださったのですが、ちゃんと2拍子の波があるほうがずっと自然だし、落ち着いていました。
でも、1拍目も2拍目も同じ波になってしまっている演奏でも、楽譜どおりだし、何がいけないのって思ってもおかしくない。だけど拍子感は、比べてみると、確かにない。拍子感が出ているかどうかって、わからない人がいくら聴いても「いいんじゃない? 楽譜どおりでしょ?」ということになります。私がチェルニー30番をレッスンで弾いて、多喜先生にまず直していただいたのが、この「拍子感」。これ、非常に奥が深いけれども、初歩から上級者まで常に意識して、ある意味、ミスタッチが少々あっても許されるけれど、拍子感がよくないのは許されない、というぐらい重要なんじゃないかと、最近感じるようになっています。
おそらくジャズの世界でグルーヴといわれるものは、多喜先生のおっしゃる拍子感とほとんど同じものなんじゃないか??
確かにグルーヴを感じるために音楽を聴いているようなところがありますからね。
最後の30分は、多喜先生の愛弟子である松本あすかさんが登場して、ふたりで連弾されていました。あすかさんのあのグルーヴ感は、けっきょく、多喜先生の拍子感が土台になっているのかな。多喜先生、音色もとっても美しかったです。