音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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アコースティック・アルケミー@サンフランシスコYoshi's

This Way
This Way
Acoustic Alchemy

アコースティック・アルケミーといえば!!! 日本にいるときは名前ぐらいしか知らなかったんですが、アメリカに来て、FMやケーブルテレビのスムースジャズ局で、誰よこれはっ!? 超さわやかでキレイ!! とチェックしたときに「また、アコースティック・アルケミー・・・」と何度も名前を目にするので、少しずつCDを買い揃えて聴いていたグループです。

創始者のニック・ウェッブはすでに亡くなり、ウェッブが加えたグレッグ・カーマイケルが今もメンバーとして残っていて、現在はもうひとりギターのマイルズ・ギルダーデイルとふたりのギターデュオ編成になっています。

その人たちがサンフランシスコでライブをやってくれる!! 生のアコースティックアルケミーが見られるなんてっ!!!! 万障繰り合わせて行ってまいりました。

基本は生ギターふたりが主役、それにキーボードとベースとドラムという編成です。ギターのひとりがメロディを弾き、もうひとりが伴奏します。

いい感じに年を重ねたイケメンといった風情のグレッグカーマイケルは、アコースティックギターのみを演奏。もうひとりスキンヘッド? 5分刈り? でちょっと迫力のあるおじさまマイルズ・ギルダーデイル、彼はアコースティックギターと赤いエレキギターの両方を弾いていました。

メロディ担当はどっちのギタリストと決まっているわけではなく、けっこう入れ替わってます。

キーボードがふわーぴよー系の大自然系サウンドを流し、そこにみずみずしいギターの音色でメロディがぽろぽろーんと弾かれる、そして伴奏もギターで、ん・ちゃ、ん・ちゃ、といった具合。実に緻密で透明感があって繊細で、研ぎ澄まされた人たちによって描き出される森のささやきというか、小川のせせらぎといいましょうか、そのサウンドは素晴らしいのひとことでした。

どの曲もわりと落ち着いたテンポで、超絶技巧ひけらかし系のプレイはなく、ひたすら美しい陰影を描くことに専念しています。最後のほうには若干フラメンコっぽい情熱的な曲もありましたが、基本は「超さわやかでセンスのめちゃくちゃ良い癒し系生ギターサウンド」路線。

途中、スキンヘッドのギタリスト、マイルズがエレキギターに持ち替えたときに若干ぎゅいーんとした音色を弾いていたこともあったし、アコースティックギターに何かエフェクトをかけていたのか、アコギの音がぎゅいーんとしていたり、といった程度の変化はありました。オルガンの音色を目立たせたサンタナ風の(サンタナにインスパイアされてつくったと、マイルズがいってました)…そんな曲や、4ビートのリズムをとりいれてアコースティックピアノの音色をフィーチャーした曲もあって、そこでは若干ベースとドラムのソロとかも短いけれどありました。

でも、いろんなジャンルの要素をいっぱい持ってきて、バラエティに富んだことをいろいろやるというよりは、徹底的に自分たちならではの気持ちよいサウンドを展開するんだといった頑固な職人肌的スタンスが感じられました。

彼らのレパートリーを私自身まだ把握しきれていないので、セットリストは書けませんが、最新作The wayの6曲目はやってくれたのは確か。およそ1時間20分のステージで、本編8曲とアンコール1曲の合計9曲。

異様な盛り上がり・・・というのではないし、ギターのグレッグは見た目もすごく素敵・・・だけどCDのおまけにブロマイドがついてくる、たとえばブライアン・カルバートソンとかの路線とも違いますし、ライブとしては地味な部類かもしれません。でも、ミュージシャンはみんなきっちり、びしーっと緻密に気持ちのいい演奏をしてくれて、お客さんもリラックスしながら耳を澄ましていて。拍手なんかも、じわーっとにじみ出る濃い感じでした。

誤解をおそれずにいれば、極上のCDをつくるのが一番向いている人たちで、いわゆる「盛り上がり」を求めるのはちょっと違うかも。でも、あの美しい世界を生で味わえるのはすばらしいことです。

彼らのオフィシャルページを見るとアメリカツアーをしていて、結構アメリカでの活動が多いんですが、もともとはイギリスのバンドなんだそうです。グレッグとマイルズ、それぞれマイクを持って少し話をしてくれましたが、イギリス英語だからなのか、いやはや難しくていまひとつわからなかったー。アメリカ人の英語よりも、聞き取りは難しかったです。