音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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子どもの演奏を聴いてぞっとっするか、そうでもないか

 うちの娘がクリスマスに日本語補習校で学習発表会、いわゆる学芸会みたいなことをするそうで、練習が本格化しています。

 下手な、とあえていってしまいますが・・・特に、自分の子どもでもないよその子どもの練習している途中の状態の歌を聴くのは、おそらく音楽好きな人にとっては、苦痛であっても不思議はありません。

 おそらく音楽がさほど好きでない人にとってはどうでもいいことかもしれない。でも、ある程度一生懸命音楽を聴いたり、演奏していて、耳が発達している人にとっては、下手な演奏を聴いてぞっとする、嫌気がさす、聴きたくないと思うのは、当然のことです。まずい料理は食べたくないのと一緒ですから。上手に演奏できる子どもなんてめったにいないわけで、だから当然、子どもの演奏を聴かされるのは、ある意味で拷問にひとしい面がある、これはまぎれもない事実です。

 でも、私は子どものピアノレッスンをやっていて、子どものピアノを聴いているわけですが、特にそれが拷問だとは感じません。というか、けっこう楽しいです。でも、そういうふうに思えるようになるには、ある程度の時間と、聴き方の変化が必要でした。

 すごく細かく、チェックしながら聞くと、ここはいい、ここはできていない、うーん、ここもだめ、だけどここはいい、というように、いろんなでこぼこの一覧表みたいものがぱっと頭の中にできます。お医者さんのカルテみたいに。その中で一番手っ取り早く良くなりそうなことに絞って、こうしようか、ああしようかと投げかける。そうすると、ぐんと良くなる場合もあるし、いまいちの場合もある。いまいちの場合は、手っ取り早く改善できそうなポイントを私が見誤っているわけで、この試行錯誤が自分の耳を試されているにひとしく、面白いわけなんです。

 こういう聴き方は、診断的とでもいいましょうかトータルに音楽として鑑賞するというのとは、まったく違いますね。たとえば、重度障害児と音楽療法のセッションをしている様子などを見せていただくと、子どもの演奏がうまいかへたとかいっている次元では対応できない。どれぐらい子どもが注意を払ったか、目の動き、体の動きなどの反応をみながらアプローチしていくわけです。

 診断的な聴きかたをする能力というのは、自分を振り返ってみると、ある日急にできるようになるものではなく、かなりの注意力と時間をかけて作り上げてきたものだなと思います。演奏や鑑賞だけに専念していては、なかなか身につかないかも。

 話は戻りますが、子どもの下手な演奏を聴かされてつらい人は、どこがどう下手なのか項目を10個か20個ぐらい頭の中で作って分析しながら聴いてみることをおすすめします。こういう理由で下手なのか〜、と診断してみるのです。もちろん、下手とか上手とかではなく、音程が合っていないとか、リズムがあっていないとか、合奏だったらどの楽器がどうズレているとか、事実を突き止める。

 
 でも、そうやって下手なところを列挙していくと、たいてい1つぐらいは、いいところがあるんですよね、ちょっと聴いたら下手でしかない子どもの演奏にだって。元気だとか、いきいきしているとか、音楽を感じているとか、声がかわいいとか。ひとつもいいところがない場合は、曲がそもそも合ってない可能性が大だから、その曲を与えてやらせている大人に責任があります。
 
 ただし、やっぱり子どもの演奏を聴いたら、そのぶん素晴らしいプロの演奏も聴いて、プラスマイナスを調整したくなる部分もありますね。やっぱりエネルギーはちゃんと充電しないと!!!