今回のWEB中継、7時間の時差があるので、オンラインでしか見られないものの音質も良く、充分鑑賞に堪えうるクオリティでした。夕方の5時ごろから夜中まで、というスケジュールなので、ちょうど夕飯どきと重なって、パソコンにかじりついているわけにもいかないのですが、それでも時間を見つけては聴きました。
真面目に聴きはじめたのは2次予選から。ショパンのソナタの3番を弾く人がかなり多いです。毎日誰かの「3番」を聴いているのですが、「またこの曲?」という感じがまったくない! 来た来た、ぐらいの感じで、人によって感じが違って実に面白い。特に終楽章がこんなにカッコいい曲だったとは、…ちょっと練習してみようかな…と楽譜をめくってみると、終楽章だけで14頁ありました。
な、長い…1〜4楽章だけで何ページなんだろうか…。しかも参加者の皆さんは、ソナタ以外にも沢山課題があるわけです。そんなことは百も承知でしたが、こうして楽譜を引っ張り出してみて、「量」の多さに改めてため息。
すべての演奏を聴いたわけではないのですが、盲目の少年ピアニストとして知られる辻井伸行君の「ソナタ3番」、終楽章のフィナーレは本当に素晴らしかった…知らず知らずのうちに一緒に歌い、リズムに合わせて机を叩いてました(笑)。「行けー!」「来たー!」…と一人で叫んでいる私の姿は、かなり変だったかも。
ソナタの3番というのは、短調なんだけれど、ときどきキラキラっと光が差すように長調も混じっていて、その揺れ動きがなんともいえません。この曲を作ったショパン自身が、「なんで自分は生きているんだろう、なぜ音楽をやっているのだろう」と悩み、孤独に自問自答したに違いない…。きれいごとだけではすまない人生の苦しさと、現実への絶望と、一筋の希望が交錯…。
言葉にしてみると、カッコつけた文章になって恥ずかしいんですが(笑)、伸行くんの弾くフィナーレを聴きながら、言葉ではなくそういった感情が…、どばーっと沸きあがってきたのです。泣けました。
伸行君は本選には進めず、残念でしたが、素晴らしい演奏に感動できた事実には変わりありません。
そしてうちのCDの山に、前回優勝者ユンディ・リが弾いた「3番」を発見。突然聴き返したくなりました。いろんな人の「3番」をさんざん聴いたあと、改めてユンディのデビュー盤に入っていた「「3番」を聴いてみると…うーん、クセがなくてつややかで、上品だけど軽やかで、彼らしさというものが直感的に伝わってきます。ある程度の「量」をインプットすることで、聞こえ方の「質」がかわっていくのだと、こんなときに実感します。
そしていよいよ火曜日から本選がスタート。こちらは夜中の1時〜3時ごろなので、夜更かしをすれば聴ける時間帯です。本選進出の12名のなかには、大崎結真、根津理恵子、関本昌平、山本貴志、工藤奈帆美という日本人も入っています。
日本人も、外国人も、みんなみんなガンバレ〜!!!
実況中継はこちらから
http://www.itvp.pl/chopin/eng/i.tvp/
ユンディ・リについてマクセルのオフィシャルサイトに原稿を書きました
http://www.maxell.co.jp/chopin/