音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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中井正子さんリサイタルでシューマンを聴く

 東京文化会館でおこなわれたピアニスト中井正子さんのリサイタルに先日、6月15日行ってきました。
今回はシューマンの作品が演奏されました。
 この日演奏された曲には、「フロレスタン」という躁のキャラクターとオイゼビウス」という鬱系キャラクターが出てくるという設定のものがありました。
 躁鬱の気がある人は今とても多いと思うのですが、そういう自分を客観的に見つめて人物に分けて名前をつけて、百年以上あとになっても演奏される名曲に仕立てるとは、まったく作曲家というのはなんでもネタにするんだな〜とあきれつつ感心しました。もちろん、そういった思索にふけることができるほど、完成された演奏だったことはいうまでもありません。
 シューマンって、ものすごく派手というわけではないのに、自分で実際に弾くと、うんざり、げっそりするほど難しいんです。それをまあ、やすやすと弾いてしまう中井先生って・・・いや、プロだから当たり前かもしれないけれど、やっぱり間近に聴くと、圧倒されます。そもそもピアノの音だとか、リズム感といった素材部分が全然ちがう・・・何と違うって・・・私?(爆) どうしても自分がピアノを弾くので、どこかで自分を基準にしているのだろうなあ。よくないよくない。圧倒的にすばらしい演奏のいいところは、「シューマンを弾くのは大変だ」ということをだんだん忘れてしまい、詩的な、哲学的な彼の内面世界にひたれるところです。そう、せっかく聴くだけでいいのだから、難しいなんてことはきれいさっぱり忘れなくちゃ、もったいない!