ショパン生誕200年ということで、ムジカノーヴァのブックレビューでショパン関連の本をたくさん読ませてもらっています。おりしも、アドリブが休刊したばかりで、今後音楽ライターって職業は果たして成り立つんだろうかと考えているところ。
そこで気づいたのが、ショパンはどうやって生計をたてていたのか、というところです。いまどきの感覚だと、素晴らしいピアニストで作曲家なのだから、演奏会のギャラと出版した曲の印税がメインで、生徒からのレッスン料はその足しなんじゃないかと思いたくなるんですが、どうやらそうではないらしい。そもそもコンサートは生涯で30回しか開いていない。レッスン料が収入の柱だったみたいです。
ちなみにレッスン料は自宅の場合20フラン、出張は30フラン。1940年代のパリの比較的高い日当が4フランなので、だいたいワン・レッスン2〜8万円相当。(ショパン 鍵盤のミステリー 仲道郁代編著より)。
レッスンは1日5時間までにしていた、と何かで読んだのですが、まあそうすると1人1時間として、1日あたり10〜40万円ぐらいの稼ぎになったわけですね。貴族同然の経費がかかる暮らしをしていたショパンは、それだけ稼ぎがあっても、いつもお金が足りなかったそうですが。
19世紀と現代では時代が違います。売れっ子ピアニストや作曲家には、演奏や印税だけで暮らしている人も確かにいるでしょう。でも、あのショパンでさえ、レッスン料が収入の柱だったと考えると・・・。聴衆や読者にウケることも大事だけれど、逆にそれにこだわりすぎず、別に収入の柱をきっちり確保して、自分の芸術を作るというのも、きわめてまっとうな手段だなと改めて感じます。
そこから考えていくと「音楽ライターは、音楽誌に書いて得た原稿料が収入の柱になっているのが望ましい」という面もあるけれど、それが絶対というわけでもないんですよね。ショパンの作品がすばらしければ、彼がレッスンで生計をたてていたことなんて別にどうでもいいのと同じで、原稿さえよければ、生計の柱が何であろうと、どうでもいいんですから。