音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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イエロージャケッツ@オークランドYoshi’s

トゥエンティ・ファイヴ(DVD付)
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イエロージャケッツ

 最近なんだかバタバタしていてパソコンの前に座る暇がなく、座っても締め切りの原稿を書いてばかり。更新が遅くなり失礼しました。

 先週の日曜日、オークランドのジャズクラブ、yoshi'sにてイエロージャケッツを聴いてきました。彼らのことは大好きなんだけど、日本ではそう頻繁に聞ける機会もなかったので、本当に心待ちにしていたライブです。

 メインは、最近出た25周年のベスト盤からのラインナップでした。
 以前見たときも思ったけれど、この4人、ユニゾンの重なり方がほんとうに尋常じゃないほどぴったり。合わせようと思って合わせているじゃなくて、頭の中の歌い方がまったく同じ、感じているリズムがぴったり重なっているんだろうなぁと圧倒されてしまうような合い方なんです。いや、なにも彼らはメンバー間のシンクロ具合を競っているわけはないんですが、なにか演奏に「生き物」のような立体感というか手ごたえというか深みがあるんです。その要素のひとつに、異様なまでのユニゾンの合い方があるのではないかと。

 メンバー全員素晴らしいんですけど、この日私が釘付けになったのは、ピアノのラッセル・フェランテでした。ステージから4列目ぐらいの正面付近という最高の場所で聴けたこともあり、ラッセルが弾くピアノというものをしっかり聞き届けることができました。

 数ある彼の録音のなかには、早弾きプレイだってなくはないんですが、この日私は、ラッセルって1つ1つの音を「ポロン」「ポロン」ときっちり聞き届けてから次の音を聴く、まるでリズムのくさびを打つように弾く人だなと感じました。

 彼のタッチもまた独特で、力強いけれどうるさくなく、がっしりとした芯があって、彼が弾き始めると「ああっイエロージャケッツのピアノの音だ」と思います。彼のピアノを生かしたのがイエロージャケッツなのか、イエロージャケッツのスタイルに彼が合わせているのか、おそらく両方なのでしょうが、ラッセルの持つ音、フレーズは確かにこの4人で演奏したときに素晴らしく生きてくるのでしょう。こんなふうにピアノを弾く人を、私はほかに知らないなあと思いました。キース・ジャレットに似ている、という意見も世間にはあるようで、確かに共通点は感じますが、私から見るとけっこう違いますね。

 この日ラッセルは、ピアノの譜面台のうえにシンセを載せて、木琴の音やストリングスの音で弾いていました。またこのシンセプレイが信じられないほど素晴らしく、ストリングスはまるで本物のオケみたいな荘厳さだったし、木琴の音が聞こえてきたときは、思わずドラマーのマーカスのほうを見てしまいましたよ。彼が叩いているのかしらと思って。

 余計な音は絶対に出さない、でも出したからには世界を変えてしまう、そんな不思議な魔術師のようなピアノを弾く人がラッセル・フェランテなのだなあ、と勝手に関心していたのでした。

 また、弾いているときの様子が、見るからに脱力してリラックスして、集中しているな〜って感じなんですね。ステージでこんなふうに弾けたら気持ちがいいだろうなあ。
 
 スムースジャズに比べるとイエロージャケッツは辛口なんですけど、それはたとえれば白ワインのような辛さで、いくらでも飲めてしまう、じゃなかった聴いていたい、そんな音楽です。

 最近の25周年アルバムはベスト盤になっていたせいか、とてもポップで聴きやすかったと思います。この日のライブも、ポップで、それでいてちゃんとジャズという絶妙のバランスでした。

帰ってきてからずーっとイエロージャケッツばかり聴いています。ああ〜あと10回は彼らのライブに行かないと気がすまないわ!!!!