音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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ノーマン・ブラウン@サクラメント ラディソンホテル

West Coast Coolin¥'
West Coast Coolin¥'

アメリカのアマゾンのページで視聴できます。

ノーマン・ブラウンといえば、ジョージ・ベンソン直系のスムースジャズのギタリスト。曲もよけければギターの腕も抜群。来日はしていたけれど聴きにいくチャンスがありませんでした。その彼が、サクラメントでコンサートをやってくれるというので、行ってきました。

コンサートはコンサートなんですが、ホテルの中庭にステージをつくって椅子を並べた「お祭り」風。夕方の7時半開演とはいえ9時ごろまで明るいし、飲食OKだし、超リラックスモード。お客さんは500人ぐらいでしょうか。日本の日比谷野外音楽堂をちっちゃくしたようなイメージです。

このシチュエーションでいちばん後ろのほうの席だったので、ノーマンの神業的ピッキングに集中、なんてできる状況ではありませんでした。音が特にひどいわけじゃないんだけど、観客が水を打ったように静まっていたわけではないし、1つ1つの楽器のパートまでくっきりわからなかったので。

でもコンサートとしてはとても楽しくて良かったんです。

まずお客さんの層は、30代以上が圧倒的に多くて、女性は背中や肩を大胆に出したロング丈のワンピース姿に帽子とか、男性はアロハシャツとか、みんなとっても素敵におしゃれしていました。しかもカップルばっかり。しゃべるわ、飲むわ、食べるわで、とにかくエンジョイしてます。
演奏がはじまって前半のほうは、ステージのほうへの集中もいまひとつでしたね。小声でおしゃべりする人も結構いたし、そもそも明るいから、照明もあまり役立たないし。この状況では、いかにノーマンブラウンが「すごいソロ」をやっても全然ウケないだろうなあ。

しかしそのへんは承知なんでしょう。ノーマンひとりでステージを仕切るわけじゃなくて、さわやか系キーボード(ピアノの音だけで弾いてたのでピアニストかも、)のアレックス・ブニョン、腰をくねらせてちょっと切ないソプラノサックスを吹くポール・テイラー、迫力のあるミドルエイジのシンガーパティ・オースティンが次々に出たり入ったりします。それぞれが、自分の持ち味で「これでどうだ」的な1曲をさっと演奏しては入れ替わる。これなら飽きないです。

マイクはノーマンが持っていて、いちおう進行みたいなこともやっていました。ストイックな雰囲気のキャラを想像していましたが、わりとリラックスした感じの人なのかしら? と思いました。

そんなふうに、マニア向けでない展開ではありますが、1曲のうち、後半になってアドリブ部分のソロはしっかりとあって、そこでピアノのアレックスがダダダダダダと激しく同音連打をやってみるとか、それぞれ「お〜盛り上がってるぞ」と伝わってくるようなプレイをちゃんと入れてくれるんです。パティ・オースティンは、スキャットで楽器のまねをしていました。お客さんも「いいぞ〜」って感じに拍手したり歓声をあげたり。ポール・テイラーが吹き始めた曲が、それこそラジオで毎日かかっている曲で「あー、これ彼の曲だったの」と思ったら、まわりの人もみんな「知ってる、知ってる」みたいなノリで拍手してました。

途中に休憩があって、後半になると、パティがとうとうとMCで何か語っていたりとか、ノーマンはジョージ・ベンソンの「マスカレード」をワン・コーラスまで歌いはじめ・・・。もちろん客席は大受け。なんでもアリなんですねー。これがだいたい9時ごろで、やっと陽がくれて照明が機能するようになって、お客さんの意識も舞台に集中してきたようです。

最後のほうには、ノーマンが「What's going on」まで歌っちゃって。最新アルバムでカバーしているのはそうなんですけど、まあ、受ける受ける。

とにかく「楽しもう」「楽しませよう」という意識が強烈でした。日本では、野外のイベントでも、もう少し「聴くぞ」モードに入った熱心なファンのほうがずっと多いので、なんか、このリラックスしたアメリカのノリは、いいんだけど、慣れなかったです。でも、お客さんたちは、みんな曲に合わせてリズムを見事にとって体を動かしているし、ちゃんと聴いている。

「ノーマンのプレイを鑑賞しにきた」というよりは、「いい音楽家なら誰でも大歓迎!」みたいな・・・。したがって、ライブ中メモなんかとって聴いていたら「えー、お仕事〜? 大変ね」と同情されそうな雰囲気です。

日本では、スムースジャズは音楽ファンのものだけれど、カリフォルニアでは、もっと「みんなのもの」なのではないのかしら・・・。

この前教会で知り合った50代の女性が「通勤のときにはスムースジャズ聴いてるわよ」と話していたのを思い出しました。

ノーマンのバンドの編成は、ギターがノーマン、キーボード2、ベース、ドラム、パーカッションでした。キーボードの人を、from Japanといって紹介していたし、見た目も日本人女性だったんです。名前が聞きとれなかったんだけれど、誰なんだろう。気になります。