音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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小曽根真の新作「REAL」

「21世紀へのチェルニー」でもご協力いただいていたジャズピアニスト、小曽根真さんの新作が出ました。
本の重版やらセミナーがどうのといった話でバタバタ忙しかったので、やっとお盆になってゆっくり聴いています。

いきなりエレピの音が!!!! ・・・フェンダー・ローズですよ。しかも、ベースのジェームス・ジナス、いつもウッドベースなのに、・・・このシャープな音は、エレクトリックベースでしょ。彼はもともとウッドとエレキの両刀つかいですけれど、ザ・トリオで使っていたことあったかなあ。今度調べてみますが、あまり記憶がない。
エレピ×エレキベース。なんかすごくフュージョン寄りというか、フュージョンの人がやっているコンテンポラリー・ジャズに近い音。私自身はピアノを基本にしているはずなんだけど、なぜかこのローズ・サウンド、空気のようになじむ自然な感じです。

最近、小曽根さんの「トリオ」というと、すごく暖かくて親しみやすいイメージがありました。難しいこともやっているし、超絶技巧もばんばん飛び出すけれど、それよりも、とにかく、あったかく、包み込んでくれるような。

それが、このアルバムの1曲目「Central Booking」は、もっとダークでシャープ。心地よい緊張感。なんだか、ちょっと違う小曽根さんとザ・トリオの一面を感じます。3曲目もエレピに、エレキベース。うう〜・・・クールで、ものすごくカッコいいな。チック・コリアが「スペイン」を弾いているのはエレピですけれども、それに近いイメージさえある。

2曲目になると、いつものザ・トリオらしい、やんちゃであったかくて元気で小気味よい世界。ちょっとホッとします(笑)

小曽根さんのローズ、思いがけず、すごくいいです。すっごく涼やか。ジェームスのエレベが、また、冴えてる。
和泉さんも「ピラミッド」でローズ弾いてたし。小曽根さんも和泉さんも、グランドピアノでの演奏を極めようとして、ここ何年か懸命になっていたはずなのに、なんでまた、ここでローズなんだろうか・・・でも。ふたりのひくエレピって、想像以上にカッコいいんですねぇ。

これは私の勝手な想像だけど、グランドピアノを極めていくと、やっぱりクラシックのピアニストのことが視界に入ってくるんじゃないかと思うんです。そこでジャズ・フュージョン出身のピアニストの有利な点といえば、アドリブができて、作曲ができて、リズム・セクションと合わせる技術を持っていて、しかもエレピやキーボードが弾ける幅の広さになってくる。もちろんグランドピアノを弾きこなす技術も極めてほしい。グランドピアノならではの音色の変化、繊細さ、豊かな響きは、なにものにもかえがたい。

ただ、バンドでリズム・セクションと一緒に演奏する以上、音が消えにくいエレピの導入は、他のメンバーへの「ピアノの音が消えないように」というプレッシャーを減らしてくれる良い面もある。

小曽根さんも和泉さんも、エレピは二次的なものとして、本業はピアノという姿勢でいらっしゃるようです。もちろんそれはそれでうれしい。でも、今回立て続けに2人がエレピの導入をはかったのを聴いて「いいよねえ・・・」と、ちょっと驚いています。これから、この動きが増幅したりして。


うちには本物のローズなんてないんだけど、クラビノーバにはそれららしき「エレクトリック・ピアノ」の音色が入ってます。ひさしぶりに、いじってみようかなあ。