音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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納浩一「琴線」

ベーシスト納浩一さんのソロアルバム。
気軽に注文して気軽に聞き始めたら、大ヒットで、はまりにはまってしまいました。ここ数日、朝から晩までパソコンを立ち上げている間ずっとリピートしています。

何がそんなに良いのかって? このアルバムは全曲カバーなんですが、ジャコやチック、ブレッカーブラザーズなど微妙にフュージョン系の曲目を取り入れています。そして演奏メンバーは。ウッドベースが納さん、ピアノがクリヤマコトさん、ドラムが則竹裕之さん、ギター小沼ようすけさん。ジャズをルーツに持っているんだけれどジャズ以外でも活躍しているミュージシャンたち。しかも非常にアコースティック編成になっています。

ウッドベースとドラム2人のドナ・リー、ギタートリオのサム・スカンク・ファンクなんて、もうたまらない選曲で、ちょっとエキサイトしてしまいました。特に小沼さん、ひとりで見事にあのスピード感と迷路っぽい複雑な感じを出しています。素晴らしい! それから、スティーブ・スワローの「レディーズ・イン・メルセデス」、これはベースとピアノのデュオで演奏していて、まるで銀河鉄道の旅?? みたいな夢のある素敵な世界です。

 なんだか異様にリピートせずにはいられないのは、いったいなぜなのか考えてみましたが、フュージョンっぽい曲を、フュージョンもできるミュージシャンがジャズな編成で演奏するというコンセプトが、私の好みなのです。

 それをコンテンポラリージャズという括りにして良いのか、いまひとつジャンルわけとしては微妙ですが、ステップスの「スモーキン・イン・ザ・ピット」とか、「タイム・スクエアド」のような最近のイエロージャケッツ、さらには日本のフォー・オブ・カインド、そして天野清継さんや松本圭司さんがここ最近精力的に繰り広げている「フォー・コーナーズ」、これらの路線に通じるコンセプトだと思います。

いわゆる純粋なジャズと似ているようなのだけれど、私にとって決定的な一線があって、今名前を挙げたグループは、この線よりも自分側に入っているんです。そして、この納さんのアルバムも。

編成がアコースティックだと、あっさり味だな、と思います。エレキギターとか、びしばし系のドラム、鋭いエレキベース、どれも大好きですが、素材としてやっぱり濃いんですよね。濃いということはカラフルということで、濃淡みたいなニュアンスとは別のところに焦点が来る。でもアコースティック編成だと、カラフルではなくて、もっと白黒に近くなるけれど、ピアノの余韻だとか、ブラシでスネアを静かに鳴らしたりとか、音の濃淡が美しく味わえる。

だけど音楽の枠組みとしては、メロディがしっかりあって、そこそこアドリブがあって、4ビートに限定されないリズムがあって…そういうほうが楽しい。

とにかく好み!! 録音もいいし、聴いていて幸せです。