音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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ライヴ経験は多いほうが偉いのか

 最近よその掲示板に行って書き込むようなことは、あまりやっていないのですが、見るのはあちこち見に行っています。どこも管理人さんが頑張って、いい雰囲気のところばかりです。ただ、ときどき、なんとなく「ライヴにいっぱい行っている人は偉い」ような見方を感じます。私自身、前は「ライヴ経験が多い人のほうが偉い」ような気がしていたのですが、最近「それにも一理あるけど一概にはいえない。どれだけ楽しんで感動できたかのほうが問題」と感じるようになってきたので・・・書いている人の無意識に隠れている部分が、いちいち気になってしまうのかも。

 私のように音楽雑誌に原稿を書かせてもらう立場になると、本人にそのつもりがなくても、すでに高所から意見を言っていることになります。そうなると、言及しているアーティストについて知らないことがあったり、行っていないライヴがあったりするのは、読者に対して申し訳ない。ファンになる以前のライヴというのは今から行けないので、どうしようもないのですが、少なくとも現在は、守備範囲のアーティストのライヴは、出来る限り行くようにつとめています。
 ですが、一般の音楽ファンとして、ライヴにいっぱいいっているほうが偉いという感覚は・・・。確かに、沢山ライヴを観ていると、たとえば「あっ今もしかしてミス!?」とか(爆)、「今日は調子よさそう」(その逆もときにはあり)、「こういうソロの展開は珍しいかも」等々、いろんなことが見えてきて面白くなります。こうなってくるとライヴの面白さははまるので、「もっと行きたい」「あの興奮をもう一度」」的な欲望にかられ、もう何がなんでも、どんなことをしてでも行きたい、となってしまう(実体験ずみ)。実際、飛行機や新幹線に乗ってライヴに行くかたはいくらでもいらっしゃいますもんね。

 形に残るものばかりではなく、音楽のような形に残らないものにお金や時間をかけるのは、すごく尊いことだと思います。ですが、ライヴに沢山行った人が偉いかというと、それはまた別のような気がして。なんだかそれだと、「優秀なリスナー度」を競争しているような。

 これは自分の経験からいえることですが、週に3日も4日もライヴに行っていると、「誰と誰のスネアのチューニングはこう違う」「誰と誰のピアノのタッチはこう違う」的なマニアックなことはよくわかるようになりますが、そのかわりに、「わ〜どうしよう、超うれしい!!」というような感動やドキドキしたりする気持ちが薄まってしまう。
 それに、ライヴで得られる刺激というのは、範囲というものがあります。ライヴに行かないかわりに、家族や大切な人、友人と過ごしたり、映画や、バレエや、お芝居といった他ジャンルの舞台に触れたり、自分が楽器を演奏したり、旅行に行ったり、運動したり、飲みにいったり、本を読んだり、おいしいものを食べたりするのも、人間としてのバランスをとるのに大事なんだよなあ、とか思ったりして。なによりも、詳しさや経験を「競う」ことをはじめてしまうと、急につまらなくなってしまうような気がします。人と競うとつまらなくなるのは、ピアノも同じなんだけれど。

 私はまあ職業柄マニアックな知識を持っていなければマズい立場にあるわけですが、それでもライヴ以外の人生・も大事にしないとな。なんて最近思ったりするのでした。