音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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緻密な計算

 かつて90年代にT-スクェアの大きな柱として活躍された本田さんと和泉さん。先月わたしは、たまたま一週間のなかで、おふたりにそれぞれ新作の取材をすることになったのでした。今月の「アドリブ」誌には、おふたかたのインタビューを書かせていただきました。よろしかったらご覧くださいね。

 和泉さんが6月21日発売なのに、5月の末までレコーディングしていたと聞いて、よくまあ間に合ったものだわと絶句していた翌日、「本田さんの音源があがったので取材を!」という電話が編集部からかかってきて、またびっくり。発売日まで1ヶ月ぐらいしかない! おふたかたとも、凝り性というか、納得いくまで、いくらでも煮詰めるタイプなのでしょう。

 それにしても、和泉さん・・・1ヶ月も毎日ベストなテイクを求めて夜中に録音を続けるって、すごい執念というか、そこまでやれるピアニストってそうそういないような気がする。私もそんなにレコーディング事情に精通しているわけではないのですが、クラシックでもジャズでも、2・3日で一発録りという話を聞くことが圧倒的に多いような気がするんです。予算の問題もあるのだろうけれど、1ヶ月やったからといって、よい演奏になるわけでもないという理由が大ではないかと。逆にいえば、和泉さんは1ヶ月録れば、3日で録ったものよりも、いいものができる確信があるから・・・わざわざ実行したということになる。どっちがすごいと競うものでもないけれど、ピアノソロの録音スタイルとしては、ちょっと独特なのではないかと。

 今思えば、本田・和泉のおふたりがいたころのスクェアって、すごくポップで聴きやすくて、だけど何十回、それこそ百回以上くりかえし聴いても飽きない、しかも十年以上たってもぜんぜん古臭くない、いまでも新鮮なぐらい・・・DSDマスタリングで再発されたものを聴きなおして、「え〜こんなことやってたんだ!!」と驚くぐらい細部まで作りこんである。要するにオーケストレーションと一緒なのかなあ。クラシックの作曲家がスコアに向かってあーでもないこーでもないとやっているようなことを、スタジオでやっていたのかも。

 本田さんも和泉さんも、ジャズっぽいアドリブをやろうと思えばばりばりに演奏できるのだけれど、そういう意味では根っこのところに、ポップなものがあるのかなあ。まあ、文章の世界でも、わかりやすいもの、繰り返しに耐えるものほど、才能と推敲が必要な傾向はあると思います。すすすす〜と頭に入ってくるものって、簡単そうに見えるけれど、ものすごい緻密な計算が必要で、その計算というのは、既存の公式をあてはめてもダメ。自分の感覚を頼りに「こういう材料を持ってくると、人にはこう感じられる」という「素材」vs「効果」を意識しながら、素材をつくっていく・・・そんな意味での「計算」。はっ、脱線してしまいましたが・・・本田さんも和泉さんも、元スクェアで、退団から6年が経過して。偶然にも同じ時期に、ソロになってからの集大成みたいな作品をリリースされた・・・という話でした。はい。

 ところできのうトラックバックをいただいたブログなのですが、KM(=松本圭司さん)のセカンド・アルバムについての情報が載っていました!!! ちょっとびっくり。