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音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

セミナースケジュールはこちらです。 山本美芽オフィシャルサイト

人生、一度は外国に住むべきか?

金曜日に、上原ひろみがニュース番組にでるというので録画しておいて見たら、「若者の内向き思考」について、ニューヨークを拠点に活躍する上原さんと矢野顕子さんがコメントしつつ、上原・矢野のライブ映像を宣伝するという内容でした。

外国なんか行かないで、国内で楽しく快適に暮らしたいという若者が増えている。
それに対してハングリー精神が足りないんじゃないかという危惧。

うーん。

アメリカから帰って以来、なんだかこの手の議論を聞くと、考え込んじゃうんですよね。

このケースでは、上原さん矢野さんという実績のある方々が言っているのでいいんですが、外国で実際に暮らして不自由したことがない人が、軽々しく「海外に出るべきだ」みたいなことを言っているのを聞くと、どうも抵抗感があります。

上原さんが「言葉も通じないところで、パンを1個買うだけでも、どれだけ大変か・・・」
と番組の中で言っていたので、そういうレベルの苦労を彼女もたくさんしていて、それでも日本に戻ろうとは思わないんだなと感心しました。

上原さん矢野さんも、日本の外で大変な苦労はあったのだと思います。

私自身、アメリカで暮らしたこと、娘をアメリカの幼稚園と小学校に通わせたこと、英語を話さざるをえない環境にいたこと、アメリカで出産したこと、アラスカやメキシコ、カリブ海まで訪れた…自分の経験の幅は広がりましたね。

でも、留学って、お金を時間をかけたわりには、リターンが不確定すぎるということに、みんなが気づいただけなんじゃないかな? と、私は思っています。海外で働くことも、すばらしいことではありますが、ある程度以上の能力がないのに日本から出て行くと、国内にいるよりも、かえって悲惨な目にあうことに気づいた人が増えたということでは? とも。

英語にしても、日本で日常会話ぐらいはマスターしてからアメリカに行った人は別として、英語が思うようにしゃべれないで渡米していると、2年ぐらいというのは、まだまだこれから、という状況なんです。

外国に行くのなら、最低でも3ー4年、できれば5−6年、はっきりとした成果をあげるために必要でしょう。

カルチャーショックを受けるためだけなら、1ヶ月とか3ヶ月ぐらいの短期でも充分。

語学の勉強のためだけだったら、2−3年で成果を出すのは誰にでもできないし、日本でネイティブのマンツーマンの家庭教師でも頼んである程度のところまでやったほうがコストパフォーマンスは良いでしょう。

ピアノで留学しても、やはり語学力がないと勉強に差し支えるので、同じことがいえます。

海外に行ってカルチャーショックを受けるのは大賛成。英語をはじめとする語学も大賛成。でも安易な留学には反対です。

日本人補習校で感じたのは、もともと頭のいい子は、日本語も英語も良くできるということです。逆にいうと、勉強が苦手な子は、日本語も英語もどっちもぐちゃぐちゃになる危険があること。そしてそのタイプは、日本語学習をあきらめて英語に集中したら急に成績がアップして生き生きしてくる、というような話を多数聞きました。

ある程度優秀でないのに海外に行っても、似たような危険があるのではないか。

それから、アメリカでいくら頑張っても、やっぱり日本人はマイノリティであって、たとえば日本で高校の生徒会長になるような感じで、注目を浴びて人気者になるのは、相当難しい。テレビドラマ「glee」「ゴシップガール」などを見るとこのへんの感じがよくわかります。

アメリカに移民してきているのは、中米・南米・中国、フィリピン、インドシナ半島、東ヨーロッパ、ロシアの人たちが中心で、本国の生活水準がアメリカとは明らかに差がある。だから、マイノリティであろうがアメリカにいるほうがマシ。でも、日本人には先進国である日本が母国としてあります。日本でも在日朝鮮人などマイノリティの方々はさまざまな不自由やいやな体験をされているかもしれません。自分がマイノリティでなくいられる場所がある貴重さに、私はアメリカに行って気づきました。

ピアニストの辻井伸行さん。お母様が、海外留学も選択肢に入れて考えたそうです。でも、家族がバラバラになるのを避けるために留学は結局しなかった。ただ、海外のコンクールはたくさん受けて、今も海外でもコンサートをしています。
ヴァイオリニストの川畠成道さんの決断は逆で、お母様と一緒にロンドンに留学されました。著書を読むとそこでたくさんのことが吸収できて本当によかったということでした。

短いニュース番組ですから、限られた時間での問題提起ではありましたが、そんなふうに、いろいろと考えさせられました。

我が家は今年、日本に慣れるのでてんやわんやで、海外旅行に出る余裕はありませんでしたが、来年はぜひ、海外に行きたいなと思っています。日本は本当に快適すぎて、うれしいのですが、ぬるま湯的な危険もありますね。