音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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船便が届き、家電が揃い、娘は小学校へ

きのうは娘の小学校の始業式でした。私も一緒についていって体育館で始業式に出て、そのあとクラスで娘を紹介してもらうところまで出て帰ってきました。

アメリカにとは卒業式しかなくて、始業式というものは存在しないので、なつかしかったです。

「お父さんの仕事の関係で、○○ちゃんはアメリカから来ました」と担任の先生が話すと、2年生たちは「おおー!!!」と大歓声。いじめられないように、という不安もあったのですが、この無邪気な反応を見ている限り、あまり心配なさそう。

3連休の初日の土曜日に、船便のダンボール180箱が届きました。一部は箱をあけないでおくことも考えたのですが、ダンボールのおき場所に困るので、結局すべて開封。家の中が足の踏み場もない状態。

必死にとにかく食器棚やら本棚などにしまって、とりあえずリビングと寝室はものをなくしましたが、12畳の子ども部屋が・・・、高さ1メートルぐらいで荷物が部屋じゅうに広がっている状態。勉強机を娘に買ってあげたいのですが、それ以前の問題。早くなんとかしなければ。

「遊んで〜」とねだる子どもたちをなだめつつ、ひたすら荷物と格闘。そして3連休の最終日、朝イチでテレビと洗濯機と電子レンジが届きました。年末に電気屋さんに行って、特売品を注文していたので、今頃まで時間がかかってしまったのです。これでようやく荷物も家電も揃い、あとは私が片付けるだけになりました。11月に船便を出してから、とにかく不便な生活だったので、はーこれでひと段落。

海外引越しっていうのは、荷物を出してから受け取りまで、3ヶ月間もごたごたといろんなことをしなくちゃいけないんですね。アメリカに暮らせたこと自体は本当に自分の財産だけど、海外引越しだけは、もうこりごり。まあ、子どもたちがもっと大きくなっていて、手伝ってくれれば、もう少し楽なんでしょうが・・・。

そんなふうに引越しでエネルギーを吸い取られてしまい、年賀状の返事もぜんぜん書けていません。ごめんなさいー!!! 

それでも、日本は(というか、うちの近所ではありますが)とにかくすべてがラクちんです。日本語が通じる。近所のスーパーで日本食の材料が格安で売っている。シュークリームもメロンパンもようかんも、ぎょうざもコロッケも売っている!!! 

アメリカには固まり肉とか、せいぜいとんかつ肉程度の厚さのお肉しかありませんし、魚といえば鮭とたらぐらい。毎朝「今日の夜はから揚げにしようか。鶏肉を解凍しよう」と夕飯の準備をスタート、昼ごろには肉をカットして漬け込み、夕方には揚げるとか、ハンバーグであれば朝から牛肉と豚肉の両方を解凍してフードプロセッサーで自分で合いびき肉を作ってました。ひき肉は売っているんですが、なぜか牛肉ばかりで、豚肉のひき肉って時々しか売ってない。カレーを作るときも、鍋物をするときも、いちいち自分で肉団子を作ってました。

野菜にしても、普通のスーパーで手に入るのは、じゃがいも、にんじん、たまねぎ、マッシュルーム、しいたけ、きゅうり、ほうれんそう、ちんげんさい、ブロッコリー、トマト、レタス、カリフラワー程度。高級スーパーに行けば、白菜ともやしも手に入ります。しめじやまいたけは売っていましたが1パック8ドルなので買ったことがなし。でも、大根やしゅんぎく、みず菜、ごぼうなどは日本食スーパーに買出ししなくてはなりません。買い忘れたらアウトです。

1時間では絶対に料理は終わらない。朝からずっと暇をみてはキッチンで15分、10分と、細切れに作業を進め、夕飯前に40分ぐらいで仕上げをするといった具合。うろちょろする赤ちゃんと、日本語と英語の大量の宿題に苦しみ助けを求める小学校低学年の子どもが絶え間なく「お母さーん」と呼びつけてくる。忍耐も限界。ゆっくり料理に専念できたら、どんなに楽しいだろう。

もうどうしても今日は疲れて限界、という日だけ、日本食スーパーで買って冷凍しておいたとっておきの7-8ドルもする高価なおでんセットと、1本3ドル近い大根を奮発して「おでん」で手抜き、または日本食スーパーで買った冷凍ぎょうざ。それがささやかな贅沢でした。

そこまで苦労して日本食を毎日準備しなくても、ピザとかのもっと手抜きなアメリカンメニューで我慢する手もあったのですが、それだと栄養バランスが悪くて私の体調も悪く、体重も増えてしまい、子どもたちもぜんぜん食べないで残してお菓子ばかり食べてしまう、夫からも不評。作らざるを得ませんでした。

アメリカにもスーパーのお惣菜コーナーはありますが、高級スーパーのホールフーズ以外はわざわざ買いたいと思うものはありませんでした。そしてホールフーズでは、ちょこっとサラダを買っただけでも10ドルぐらいと異様に高いので結局ほとんど利用せず。

さらにはお店のパンが固くておいしくないので、毎日ホームベーカリーでパンを焼いていました。最後のほうにはホットドッグがおいしいということになって、朝ごはんの定番になり、ずいぶんラクになりましたが。

そんなわけで、日本食づくりに膨大な労力をとられていたこれまでの毎日を思うと、なんでも近所のスーパーで買えて、おいしいお惣菜も手軽な値段で売っている。30分もあればご飯の準備は簡単におしまい。もう、毎日、天国です。マジで。

歩きか自転車で、たいていの場所には行けるから、急いで車を買う必要はまったくなし。アメリカでは、車がないと買い物にも職場にも習い事にも行けません。ガレージのドアが故障して車が出せなくなることが1-2年に一度はあり、(しかも修理の人は翌日か翌々日にならないと来ない)、その日は一日どこにも出られない。どんなに運転ができない私のような日本人の女性でも、「これで死んだらしょうがない」と本当に決死の覚悟で一般道なのに100キロぐらいで3車線で車線変更しながらぶっ飛ばさざるをえない。駐在当初から大人ひとり1台の車は必須なので車2台を買わなければならず、その費用たるや莫大なものがありました。渡米当初に、車がないとアメリカ人に話したとき、「えっ、貧困層?」みたいな驚きの目で見られたものです。

それが私が住んでいる日本の家では、車は必要なし。自転車があったほうがいいので一応買いましたが、大型ショッピングモールが徒歩5分のところにオープンしたので、子どもの学校のみならず、買い物も徒歩で問題なし。車は、ご近所はみんな持っていますが、別に買わなくても生活に支障がない。アメリカではそんなことはありえませんでした。

さらに宅急便や家電の配達は、2時間刻みで細かく指定してあって、その時間にきっちり来る。アメリカでは荷物の配達なんて時間指定はできないので、玄関に放置してもらう、大事な荷物の場合は受け取れなかったら郵便局に行くしかなかったし、いろいろな荷物の配送なんて朝から晩まで家で待っていなくちゃいけなかったし。そのうち慣れましたが、「しょうがないよね、アメリカだから」と何百回唱えたことか。

日本では市役所など、いろんな窓口の人が誰でも親切であたりはずれがない。アメリカだと人によってあたりはずれが激しく、用意しろという書類の種類まで人によって違うことがしばしば。そう、「しょうがないよね、アメリカだから」と唱えながえら、とにかく辛抱していたんです。

図書館にも本屋さんにも日本語の本がたくさん!!!!! これこそまさに夢のようです。700円ぐらいのファッション雑誌にしても、車を3時間飛ばしてサンノゼまで買出しに行って、15ドルとか払って1ヶ月遅れのものを買っていたのに。最新号が700円で、近所で買えるなんて。さらには、いろんな本が、お店で立ち読みできるなんて。本当に夢のようです。

まさに日本はパラダイス。もう慣れてしまっていたので苦労を苦労とも思っていませんでしたし、メキシコからの移民の人たち、貧困層の人たちの厳しい暮らしぶりも間近に見る機会もあって、自分たちが恵まれているということをいつも痛感していました。それでも、アメリカで自分がどれだけ苦労していたのか、いまさら思い起こしています。というか、日本がどれだけ快適で特殊な国なのか、ということかも。

もちろんアメリカで住ませてもらった家は200平米もあったので、私からみれば豪邸。車が2台、リモコンで開閉するドアのガレージに、車寄せもあったし、暖炉はあったし、リビングも家族用とお客様用があるという贅沢な間取り。グランドピアノの置き場所にもぜんぜん困りませんでした。キッチンだけで4畳半もあったし。もっと大きな家に住んでいた日本人のお友達もたくさんいたので、それは特別な大きさではありませんでした。

それでも、それだけ大きい家が立ち並んでいるので、徒歩ではどこにもいけない町並みになってしまうのです。日本に帰って家が狭くなったことは、ほかの苦労がなくなったことに比べれば、なんてことはありません。
アメリカの家ではトイレが3つあったので、3箇所掃除していたのが、日本では1つになったので、掃除が1箇所ですむようになったのもうれしいことです。

いろんなサービスが日本ではいい、これは外国人労働者がいなくてすべて日本人が働いていることが大きいでしょう。それから、高速道路はアメリカみたいに無料じゃないし、食料品は全般的にアメリカよりも日本のほうが高いです。おいしいからまあいっか、と思うけれど、全般的に倍ぐらい高いかも。アメリカでは、オーガニックの牛乳が1.89リットルで3ドルぐらいでしたけど、日本ではオーガニックでない牛乳が1リットルで200円ですものね。

単純労働の人件費、土地代、高速道路代、ガソリン代、ぜんぶアメリカよりも高いですから、物価が高くなるのは当然でしょう。昔、アメリカに住む前には、日本の食料品が高いなんて考えたこともなかったですけど。

それから、テレビや本が日本語だとやっぱり楽しいという事実は、やはりネイティブ並みの英語力がないと、アメリカ生活はしんどくつまらないものだった、という現実を私に突きつけます。最後の1年ぐらいは、テレビも好きなものができたし、本屋さんめぐりも楽しかったし、買い物も楽しかったし、お友達もけっこうできて楽しい毎日でしたが、そこまで到達するまでは、やはりしんどかったなー。

日本の快適な生活にすっかりぬるま湯的に漬かってしまうと、あれだけつらい思いをしてやっと覚えた英語があっという間に消えていってしまうのではないかという危惧が、脳裏にちらちらしています。