音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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フォー・オブ・ア・カインド@ブルーノート東京

 さて、ディメンションに続いては、フォー・オブ・ア・カインドのライヴの模様を。
 フォー・オブ・ア・カインド・・・今回のツアー前にCDが出ていましたが、これ、なかなか良いなあと思っていました。バンドっぽくなってきたのです。
 1枚目は、演奏も曲も当然クオリティは高かった。ただ、そこからさらに上の話になるのですが、聴いただけで「あ、これは誰の曲だ」とわかるものが多かったのです。それ自体は悪いことじゃないんだけれど、メンバーそれぞれがソロ活動をしているので、そっちとの差別化が難しいというか。たとえば本田雅人さんの曲だったら、「カッコいいけど、本田バンドでやってもいいんじゃないの?」と思えなくもない。 
 ところが2枚目になって、どれが誰の曲だかよくわからなくなっている。聴きながら予想してみても結構ハズレが多かったです。これはおそらく、楽曲をつくる時点から、4人の音を頭において作曲されているのでしょう。そのシミュレーションの度合いが、いっそう精緻になっているというか。今回ライヴに行ってみて、ますますその思いは強くなりました。

 今回演奏してくれたのは、たぶんすべて2ndアルバムからだったかな? 他のどこに行っても聴けない、ここだけでの4人の魅力がよく出ていました。サックスの本田さんは、自分のバンドよりも少しジャジーだったり、アクのうすいプレイをしていて、それが実にいい味わい。ピアノの塩谷さんは・・・同じく自分のバンドのときよりも伴奏の職人芸が出てきて、これがまた聴きごたえありました。そこから一転してソロになったときの冴え方も鮮やかでした。ベースの青木さんは、ときどき一番主役になってメロディを弾くことがあったりして、う〜むなんていい旋律なんだぁ〜!!!  ・・・しみじみ、なんて。 
 ドラムの沼澤さんは・・・ライヴに行って気がついたんだけど、音の粒子がまるくてふんわりしているような。ドラムにしても、カーンとかいうきつい音じゃなくて、ソフトに「たんっ」という感じ。専門的なことはいまひとつわかりませんが、皮をあまりきつく張っていないのかも。そう思い始めたら、沼澤さんだけじゃなく、フォー・オブ・ア・カインドだと、みんな音の粒子が丸くてふんわりしているような気がしてきました。 
 要するに、中庸をいっているというか。あまりにジャジーでもなく、とんがっているわけでもなく、それなりのヒネリはある・・・この4人のプレイヤーのとっても幅広いキャパシティのなかから、ジャズとポップスという軸があって、そこで4人の公約数? 公倍数?になるようなポイントに、うまく焦点を当てられるようになっていたというか。だんだん何を書いているのかわからなくなってきた(笑)。とにかく、わざわざこの4人で集まって演奏する時間がとても素晴らしいよね! と、文句なしに楽しめた、素敵な時間でした。で、「これだけの演奏をするには、やっぱりもともとの楽曲がよくできてるっていうことも大きいよなあ」とも思ったのです。