音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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松本圭司トリオ@ブルースアレイ

 ひさびさに松本さんのピアノを聴いてきました。ベースは岡田治郎さん、ドラムは則竹裕之さんです。
 松本さんのピアノといえば、2000年でしたか、トリオ・ザ・スクェアという名義でやっていたりとか、南青山マンダラで聴いて以来になります。当然ですが、そのころよりは、かなりバージョンアップした演奏で、なかなか聴きごたえがありました。ですが、松本さんのピアノについて文章で書くのは・・・難しいなあ。ちょっとサイドから攻めてみましょうか。
 なんでも、きのうのテーマは「うつ」なんだそうで。メランコリーの「うつ」ですね。ひょうひょうと自虐的に松本さんがおっしゃるので、客席からは笑いが起こってました。でも私は、笑いつつも「あー、この人のピアノに、平日でもこれだけお客さんが集まるのは、まさに<うつ>なところを抜きには語れないなー」などと、ふと思ってしまったのです。
 ピアノに限らないんだけれど、松本さんの音楽は、メランコリックな倦怠感を感じます。きれいなメロディなのに、ンゴーって効果音が入っていたり、どうなるか予測がつかない展開とか、意表をついて来たり・・・きれいなんだけど、すごく型破り。しかも、わけがわからないってことはなくて、逆に退屈しない、面白い。そこには、「もうダメなんじゃないか」という漠然とした不安や、なにもかもが面倒くさくて、ちょっと凶暴になりたい衝動みたいなものを感じてしまう。私は、どっちかというとそういう感情に慣れ親しんでいるタイプなので、非常に「あ・・・自分だけじゃないんだ」と、妙にローテンションなんだけど、心地よくはまってしまうというか。前向きになれない人間の弱さみたいなものが、ポップな衣装をまといつつも、ダークに、すこ〜し前衛的に表現されているような。同じ悲しみを見ている友達が横に立っていてくれるような。そんな不思議な感覚が、音楽を通して伝わってきます。
 ピアノトリオだと、ピアニストの主役度は高いです。目立てるのはいいけど、芸達者でないと、聴き手は飽きてきます。普通は、バラードにアップテンポの曲に・・・って変化をつけることが多いような気がするのだけれど、なぜか昨日の場合は、そういうのでもなかった。いや、よく考えれば、ゆっくりした曲も高速4ビートの曲もあったけど、なぜか、そこでテンポは決定的な印象ではなかったような。どの曲もビートがしっかりきいていて、変化はあるんだけど、かなり統一感がありました。ああいうピアノって、どうやったら弾けるんだろうか。一日考えても答えが出ませんでしたが、まあ、簡単にいえば「才能」ってことなのかなあ。その言葉で片付けるのは、書き手としてかなり悔しいのですが、やっぱりそうとしかいいようがないかも。なんだか非常に抽象的な文章になってしまいました。もっと具体的なことを期待して読んでくださったかたがいたら、ごめんなさい!!