Moriya Saito "OROSHI"
先日ヤマハホールでレフレール兄、斎藤守也さんの演奏を聴き、
その後、去年出たソロピアノアルバムと、その全曲を収録した楽譜を入手。
なにげなく聴いてみたら
なんか弾いてみたいなと思う曲がいくつかあって
弾き始めたら、なんだか目の色が変わって夢中でピアノを毎日弾いて
ピアノが弾けない時間は必死に音源を聴いて耳コピして譜読みしています。
手始めに弾いてみたのが「CHASE」。
トッカータ系の16分音符がずっとタカタカしてる曲です。
バッハのプレリュードのようでもあり、ベートーヴェンの月光ソナタ3楽章のようでもある。
左手は、「レレドレ」を繰り返します。
ジャズっぽいモードやコードを、ワイルドに右手で鳴らしながら
左手がほぼ休みなく突っ走る。
革命のエチュードの現代版かな。
この左手のレレドレが最初、2ページ弾いたら疲れちゃってギブアップでしたが、
力を入れないようにしたら、最後まで通せるようになりました。
弾いていて響きが気持ちいいのです。
グリッサンドもいっぱい入っていて、これが難しいのだけれど
決まるとワイルドでものすごく格好いい。
そして、左手がピアノの低音をぐわんぐわんと鳴らして作る16ビートのグルーブが
なんともいえない陶酔感をかもしだし。
そこに辛口の右手の和音がバシバシバシっと入る。
スカッとするなー。
とにかく前に進むエネルギーみたいなものが弾いていると沸いてきます。
こうやって弾いてみてから守也さんのアルバムを聴きなおすと
左手のレレドレのパターンが、まるでいいドラマーとベーシストが組んだリズムセクションみたいなんですよね。グルーブがすごくて低音の鳴りが気持ちよくて。ピアノでこんな音が出せたんだという驚き。
仕事柄、コンポーザーピアニストの楽譜はほとんど買って弾いてみているのですが
なぜか普段は練習する気が起きない。
なぜか今回は練習する気になったんです。珍しく。
おそらく守也さんの曲には、クラシック的な構築美があるから、ピンときたのかなとか
漠然と考えています。
今日は「FLOW」を譜読みしてみました。
こちらは、最初2ページはゆったりとしていて、その後細かい16分音符のアルペジオで畳みかけるように怒涛のようにハーモニーが展開していきます。左手がシンコペーションを入れた独特の伴奏パターンになっていて、これが右手とパズルのように合わさってものすごくきれい。
いかにも悲しい、という曲ではないけれど、
自分ではどうしようもないことに対して心が揺れる。
その揺れ動きを感じる曲です。
ねんじゅう私なんて「くよくよしても無駄だから切り替える」だのいってますけど
人間なので、くよくよするのは当然。
くよくよを昇華したらこんなすごい曲になるのかなぁとか。
くよくよ、とかいう表現も失礼ですけど、
この曲を弾いているあいだ、聴いている間だけは思う存分くよくよしていいんじゃないかという気になります。すごく大事な時間。
最初聴いたときよりも、弾いているうちにどんどんその世界にはまって行ってしまう。
ひさしぶりにこんな経験をしています。