「絶対音感」の著者、最相さんの最近の作品です。
最相さん自身も病気があり、セラピーを受けたという話に興味を持ち読んでみました。
河合隼雄さんが広めた箱庭療法の話が詳しく書いてあります。言葉にならない部分を箱庭にあらわすことで、クライエント(患者)の内側がゆっくり良いほうに変わっていきます。木の絵を描く場面も。
音楽も、言われた通り正確に演奏するのではなく、自己表現するなら、セラピー的な効果はあるだろうなと思っています。
セラピストの抱える難しさも描かれていて、クライエントが自殺してしまうことがどうしても起こるのだとか。
そんなとき自分を責めてしまうセラピストに対して、先輩セラピストから、自分を過大評価していないか、とツッコミが入ります。
教える仕事をしていると、相手をある程度以上助けられない自分への歯がゆさと戦うことが出てきます。
例えば、ピアノを教えていて、やる気があるのに、電子ピアノしか置けない家庭の事情があり、それでコンクールに通らない場合など、よく聞きます。
でも、本当に桁違いの才能があれば、電子ピアノだろうと、世に出ます。だから、電子ピアノで差はついていても、根本的には才能の問題なんです。
教える側次第で変わること、たくさんあるけれど、限界もあるんですね。
そこはわきまえる必要があるなと、思いながら読んでいました。
マンツーマンで人に接する仕事には参考になることの多い本です。