音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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轟千尋先生「きらきらピアノ」講座@横浜・中山 三響楽器 2011年9月20日

ここのところ私としては猛烈な勢いでセミナーに通っています。いちおう5年分の日本でのブランクを取り戻さないと! というよりは、面白いからですが。

ということで、20日は、ムジカノーヴァでも連載をされている作曲家の轟千尋先生の講座でした。轟先生は、テレビなどでも作曲やアレンジの仕事をされつつ、子どもむけ、それも超・初歩から弾けるオリジナル作品や、定番曲を今風にお洒落にアレンジしたものを集めた曲集「きらきらピアノ」1ー5巻を出版されて、いまその講座で全国を飛び回っていらっしゃいます。

 「きらきらピアノ」は、定番メロディをおしゃれな和音で、おしゃれなアレンジで弾くというコンセプトで轟先生が作曲・アレンジ、または原曲を選んでそのままもってくる形で、難易度別の曲集になっています。

 おしゃれな和音って何??? ジャズのテンションコード?? とか思っていましたが、そこまではいかないようで、1度4度5度ばかりでなく、2度や6度、椅音などをいれるだけで全然違ってくる、また1度4度5度でも、和音を密集ではなく乖離のポジションにするだけで響きに透明感が…というようなコンセプトなんだそうですね。

 初級にも入っていない私の娘には、1巻がちょうどよさそう。「こぎつね」とか、轟先生が弾いてくださいました。ユーチューブで演奏を聴いたときも思いましたが、音が、すっごくきらきらしているんですよねー。轟先生。伸びがあって本当にきれい。たとえ1巻であっても、大人が弾いても、情けなくならない素敵なアレンジ、オリジナルばかり。

 この前、ムジカの取材のソルフェージュ協議会でも聞いた話ですが、楽譜には、すべての情報は書けないんですね。それを轟先生は、水面から顔を出している山の絵を描き、水面から出ている山の部分が楽譜だ、と説明していました。水面下にある大きな山のふもとの部分を知るには、暗黙の了解、つまりは作曲上の約束とか和声進行みたいなことを勉強しなくちゃいけない。

とかいってしまうと非常にお勉強チックで頭痛がしそうですが、この日轟先生は、椅音に話を絞って、非常にわかりやすく話してくださいました。もちろん大学時代、和声で習いましたけど、椅音って、楽譜を見ながら全部椅音にマルをつけろといわれたら何か心配だなあ。椅音は、チェルニー30番の2番には使われまくっていて(いわれてみるとほんとにそう)、椅音というのは大事な音だから、それに向かってクレッシェンド、その音が過ぎたらデクレッシェンドなんだけど、チェルニーは親切にぜーんぶこうした強弱記号を楽譜に書いている、という話もされていました。

いま、「聴く」をテーマに単行本を書いています。楽譜という山の水面下に膨大なふもとがある、ということはわかっていましたが、作曲を勉強すると、楽譜を見ただけで、その水面下の部分をあれこれ類推できるんですね。それはもちろん、楽譜という記号をとっぱらって「聴く」体験を積み重ねることでもつくられるわけですが、作曲の勉強をすることも、同じぐらい大事だ、というのが今回の収穫でした。