音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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プロジェクトX再放送&「赤い月」

 調律師の村上輝久さんには、取材でお目にかかったことがあります。リヒテルミケランジェリの調律をしていた方です。村上さんが登場するプロジェクトX、ピアノづくりのお話がこのまえ再放送でやっていました。
 スタインウェイを分解して必死に真似して、一生懸命作ったピアノを、イタリアから招いたタローネにぼろくそに言われてしまう・・・職人さんたちの絶望と、負けるもんか! という熱意。木と木をつなぐ、日本伝統の技「蟻組み」をピアノに応用するシーンは、何度見てもウルウルきます。
 ピアノなんて明治より前には存在しなかった日本で、あれだけ部品の多い楽器を自分たちで作って、スタインウェイに音が負けている現実を直視して、負けずに必死に改良していく・・・大勢の人の努力があって、日本では庶民が良質なピアノをそこそこの値段で買える世の中になっているんだなあと思います。ピアノづくりという産業も少子化でいろいろ大変ではありますが、すばらしい技術はこれからも宝物としてずっと残していってほしいなあ。

 きのう・おとといには なかにし礼さんの原作ドラマ「赤い月」を見ました。「りんごは赤じゃない」の太田先生からお電話をいただいて「私が引き上げてきたときと、ちょうど同じ話なの。ぜったいに見て」といわれて見たのですが・・・
収容所での病気の流行、貨車に乗っての逃避行、ものすごい寒さ、ソ連兵が民家に押し入ってくる恐怖、・・・ドラマの中に出てくることが、いちいち太田先生に話してもらったことと一致するのです。

 太田先生のお母様は30歳よりちょっと前で、4人の子どもをつれての引き上げだったそうです。太田先生は引き上げのときに5歳だったのですが、ゼロ歳だった妹さんは、引き上げて日本にたどりついてから栄養失調で亡くなってしまったのだそうです。
 ドラマの中で、地獄だという言葉が何度も出てきましたが、敗戦が決まってから日本に引き上げられるまでの難民生活は、まさに地獄であったことでしょう。太田先生のあの強さは、修羅場を潜り抜けてきているからだろう・・・と予想はしていましたが、ドラマで見ると、修羅場というより、地獄といったほうがふさわしいと思いました。