キース・ジャレットが、チェンバロでバッハを弾いているアルバムがあります。
なにげなく聴いてみたんですけど、予想をめちゃくちゃ上回り、大ヒットっていうか、大当たり!!! ここ3日ほど、ことあるごとに聴いてます。
そもそも私は「チェンバロ特集」を1年ぐらい前に「ショパン」に書きまして、そのとき曽根麻耶子さんっていう素晴らしく知的でラブリーなチェンバリストのところに取材に行き、そのときに彼女の「ゴルトベルク変奏曲」のCDを買って聴いたときに、チェンバロって「いいな〜」と心から思ったものでした。
で。キースっていえば、ジャズの世界でも、もう、ほんとに他に出る人もいない領域までいっちゃってる大御所も大御所。特集を書くときにチェンバリスト達にきいたところによると、チェンバロはピアノとはぜーんぜんタッチや発音の構造が違うので、ピアノと同じ時期には弾けないとか、自分はもうピアノは弾けないとか、それぐらいみなさんおっしゃる。実際に私も取材としてチェンバロの体験レッスンを受けましたが、そりゃ、ただ音を出すだけならできるんですが、チェンバロらしく弾こうとすると、指の上げ下げのすべてがピアノとは違っていて、片手で音階を弾くだけでもう、グッタリ・・・でした。
それなのに!! キース・ジャレットのチェンバロ演奏は、めちゃくちゃスイスイ聴けて、もう、心が落ち着くというか、なんというか。ウィーンに行ったときに見たシュテファン大聖堂っていう荘厳でやたらと巨大な教会のことがなぜか突然思い浮かび、あの大聖堂をぼーっと「すごいなあー・・・」って眺めていた、あのときの気分のようで。
そういう諸事情を考えると、キースがチェンバロでこんなすごい演奏をしてるっていうのが、なんかもう、理解に苦しむぐらいの偉大さじゃない!? とは思いつつ、そんなことはどーでもいーじゃないっ!!! というくらい、演奏が、チェンバロの音が、とにかく気持ちを落ち着かせてくれるます。そもそもバッハの曲って、「聴いてるといいけど弾くと大変」の極致みたいなところがあるので、弾いてたときのことを思い出すと、とにかくしんどかったなぁーというのが本音。楽器がチェンバロだと、そういう過去を忘れて聴けるっていうのも、メリットなのかもしれません。