音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

セミナースケジュールはこちらです。 山本美芽オフィシャルサイト

バロックをコンクールで弾くときの評価

バッハなどバロックピアノ曲を弾くときのアーティキュレーションは、書いていない場合もありますが、書いてある場合もあり、書いてある場合、アーティキュレーションは楽譜によって違うことがよくあります。大きく分けるとふたつの方向性があります。


1 いまのピアノに合ったアーティキュレーション(ピアノ派)
2 チェンバロらしいアーティキュレーションチェンバロ派)

 

自筆譜を見ると真っ白でアーティキュレーションがないものが圧倒的に多い。また、ピアノを想定しないで作った楽曲なので、どっちが正しいと簡単に断言するのは危険と私は思います。

 

しかしコンクールの審査員には、「こっちが正しい」と考えをお持ちの先生方も当然いらっしゃいます。そのため


1 どっちでもよい派(自分の好みはあるが、他の派を尊重。その違いで落とすことはない)
2 チェンバロ派(ピアノ派のアーティキュレーションは点数低い)
3 ピアノ派(チェンバロ派のアーティキュレーションは点数低い)

の3パターンが出てくるわけです。

審査員が5人いたとして、2が多い場合は、チェンバロアーティキュレーションにしておいたほうが高得点。
3が多い場合は、ピアノっぽいアーティキュレーションにしたほうが高得点。
しかし、誰が〇〇派なのか、そもそも審査員が誰なのか、
事前に調べるのは大変です。

とはいえ、そのときの審査員の1・2・3それぞれの主義によって点数は左右される。

だから審査員の先生に習いたい人が増える。

 

バロックアーティキュレーションというのは全体のなかでは一部の要素にすぎません。圧倒的にうまければ、アーティキュレーションこれ好きじゃないなと思っても審査員は高得点をつけます。しかし僅差の場合に違いが出る可能性がある。

 

課題曲説明会で講師が弾いたアーティキュレーションや、課題曲CDに忠実なアーティキュレーションで弾いたのに、審査員コメントで「それがよろしくない」と書かれた事例、逆に課題曲CDが変だと思って自分の正しいと思う解釈で弾いたら評価が良かった・・・この類の話はいくらでもあります。

 

アーティキュレーションについて勉強し、考えて、選ぶ作業は大切にしたいです。 

審査員の傾向と対策があるということぐらいは知っていてもいいでしょう。しかしそれに合わせることだけにエネルギーを割くのも本末転倒では。

そんな傾向と対策をしても審査員がひとり変わったら効果がなくなるし、別の場所に行ったら使えないわけですから。

 

「ずば抜ける」ことや、アーティキュレーションについて自分なりに勉強することのほうにエネルギーを割いたほうが有意義な気がします。

 

アーティキュレーションが審査員の好みに合わずに低い点数をつけられて落ちることも当然あるでしょう。もちろん「このアーティキュレーションをでよかったのかな」という反省は必要ですが、「要するに、ずば抜けてない演奏だったってことだな」と受け止めてはどうかと思います。

 

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全国で展開してきたピアノ教本セミナー。
 今回は、表参道での開催です。
 少人数で、連弾にも参加しながらじっくりと教本の歴史を
 頭に叩きこむ濃密な2時間になる予定です。

「いつも同じ教本ばかり生徒に紹介してしまう」
「使っている教本のシステムがよく分からない」
「教本の途中で生徒が飽きてしまう」
こんなお悩み、抱えていませんか?
 今回の講座では、実際に最もよく使われている教本を中心に、
生徒一人一人に合った教材を探すためのポイントをお話しします。

~ピアノ教本の歴史と概要~

 ヨーロッパで生まれたピアノ教本がアメリカ、
そして日本に輸入され、やがて日本で国産のピアノ教本が生まれます。
こうした歴史を踏まえ、いま人気のピアノ教本の中から
生徒さんのタイプ別に選び方を提案します。

バイエル(各社版) メトードローズ(音友)
トンプソン小さな手のためのピアノ教本(全音) 
ミクロコスモス1&2 (音友) ピアノの学校1 
コダーイこどもの音楽教育 
トンプソンはじめてのピアノ教本1(ヤマハ
バーナムピアノテクニック 導入書(全音) 
ペース 幼児用おんがくをはじめよう(音友)
バスティン ピアノベーシックス パーティー 
ルフレッドレッスンブックA 
スオミ・ピアノスクール(ヤマハ
ロシア奏法によるピアノ教本はじめの1歩 1(音友)
新版オルガンピアノの本 1 
うたとピアノの絵本1みぎて(音友)
ピアノランド1(音友)
ピアノひけるよジュニア1 
Miyoshiピアノメソード1(カワイ)
ゴーゴーピアノ1(サーベル社)
 練習しないで上達する 導入期のピアノ指導 呉暁(音友)

●受講の先生のご感想
押見雅子先生
昨今のピアノレッスン・ピアノ教本には、ピアノを習う個々の生徒に合わせながら楽しく基本を学び、総合的音楽力、演奏力を身につけることが求められています。

バイエル・チェルニーで育った世代(バイエルしかなかった時代?)としては、大変なプレッシャーを感じています。それだけ日本のピアノ教育が進化し多様化しているという幸せな時代でもあります。

そんな中で、楽譜売り場を華やかに賑わす教本の数々。音楽ライター/ピアノ教本研究家の山本美芽先生はそれらを良い悪い、好きか嫌いかではなく、公平なものの見方でその日のセミナーを組み立てて下さいました。

まず海外と日本の教本とに分けて、教本の歴史を追い、それぞれの関連性を検証しました。そこから見えてくる20種類ほどの教本の特徴を比較しながら説明、実際に弾いてみたり、受講者の経験を引きだしながら進行していきました。
そこには受講者から大きなうなずき声が度々広がります。全調の総合型教本はペースメソッドが基本となっているということ、脱力を身につけてからレッスンを進めていく教本、即興から始まり創造力を育てていく教本、その時にできなくても早めに難しいことに慣れておく考え方など、大変興味をそそられました。
 続きはこちら→http://www.piano.or.jp/seminar/news/2015/07/28_20023.html

 


ピアノ教本セミナー
11月10日(木)表参道クラシックスペース
http://omotesando-musicstudio.com/
スタインウェイのセミコンのあるスタジオです。
東京メトロ(銀座線、半蔵門線、千代田線)表参道駅
B2出口(階段のみ)より徒歩2分
B3出口(エスカレーター)より徒歩2-3分
10:30~12:30
受講料: 4500円
定員:15名
講師:山本美芽(音楽ライター、ピアノ教本研究家)
お申し込み:http://mimeyama.jimdo.com/mail/ より11月10日受講希望と書いてご連絡ください。

残席わずかなのでお早めにどうぞ。