音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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理想を追求するシェフとの出会い

ピアノの先生としてサクセスするというとコンクールに入賞するとか、生徒数を増やすとか。

ライターとしてサクセスするというと、著名な媒体で著名な人に取材して高いギャラをいただくとか、大きな出版社で本を出して売れるとか。

セミナー講師としてサクセスするというと、楽器店セミナーなどに人がどっと押し寄せるとか。

 

どうも「数」ばかりで、「質」の話があまりないんだけど、質を追求する形のサクセスってないんだろうか。みたいなことをぼんやりと長年思っていました。

 

ところが先日、facebookで偶然見かけたシェフを推すコメントにピンときて、お店に行ってみたら、「これでしょ」と感動した・・・というのが今日のお話です。

 

江の島にあった有名店な人気のお店を閉めて、しばらくブランクがあって、シェフが北鎌倉の駅前に出したのが、私が行ってきたお店、akizuki 。

 

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先日、明月院を訪れたあとに、北鎌倉の小さな隠れ家イタリアンのお店に行ってきました。akizuki というそのお店は、予約した昼の12時までしまっていて、時間になってからほとんど片手ぐらいの小さな看板となる表札を玄関先にそっと置いただけ。どこにあるのかわからなくてグルグルご近所を探していました。

 

カウンターが6、テーブルが6、12人で定員。古民家の1階部分をお店にリフォームしてオープンキッチン。ほとんと我が家とも変わらない1階の広さ。

カウンターに娘と座っていると、目の前のキッチンでシェフがパスタをこねています。ちいさなお団子を器用に指先でひとつひとつ平らにつぶすと、くるりと丸まって、マカロニみたいになる。

この日のお客さんは私たちを入れて8人でした。お店の方は、シェフと、奥様のふたりだけ。

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お皿を8枚並べて、ゆであがったホワイトアスパラを並べ、海老やほたてを並べ、スープをかけて、前菜のできあがり。ゆでた緑色の豆も添えて。

娘と「すごい」と目を丸くして夢中で食べました。

次に出てきたのが、丸みを帯びたグラスの中に三段重ねになったカラフルな・・・パフェじゃない? モッツァレラとズッキーニの何か?のうえにとろりと濃厚なトマトのポタージュが三層に。トマトやズッキーニがこんなにおいしいなんて・・・夢中で食べました。


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ここでパンがでてきました。カウンターの上に置いてあって気になっていた丸い大きなパンを切って霧吹きでしめらせて、焼いて、オリーブオイルを少したらして。カンパーニュなのかな。自家製パンが足りなくなって隣の「にちりん製パン」で買ってきたと奥様がお話されていました。

棚からお皿を出して並べて、お鍋でひとつひとつ素材を仕上げて、順番に盛り付ける。オープンキッチンなので全部その様子が目の前で行われるのです。流れるような動作に丁寧、それでいてダイナミックさもある仕事ぶり。眺めているのがなんて楽しいことか。

天竜川から来た鮎の甘露煮。柔らかくてくさみもなくて。感動。
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パスタは、さきほどシェフがこねていたもの。休日に釣りでつってきたという「いさき」を使って。うまみが自然で、すいとんのような噛み応え。おいしすぎるパスタ。

 

お魚は、かじきまぐろを焼いたもの。脂がのっていておいしかった。つけあわせのヤングコーンも絶妙な歯ごたえ。

 

ここで、キッチンでわらを燃やして、炎があがり、そのうえで網に載せたお肉をあぶっています。すごい!! オーブンで焼いたのかな。それを仕上げであぶっているんですね。f:id:mimeyama:20210611001921j:image
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デザートも手作りのアイス。しょうがが入っていて香りが素晴らしい。散らしてあるフロランタンも全部手作り。

 

それぞれの野菜や、お魚、お肉は、おいしいものを探して集めていて、

いったいどれだけの手間をかけて準備しているのか・・・それを目の前で料理してもらってすぐに食べる。なんという贅沢。というかもはやコンサートとまったく同じです。

 

2時間ほどかけて食べ終わってから、娘が「これでまたしばらく頑張れる」といいました。私もまったく同じ気持ちでした。

 

完全にシェフがひとりで作れる人数。12時に予約してきた人だけにコースで順番に。手間と技術とセンスの結晶でありながら、華美ではなく、おいしさをとことん追求した説得力。

 

お店の内装も派手さはないのですが、壁やカウンターの木など、素材がいいことは感じました。良い気が流れている空間。

 

従業員のアルバイトは雇わないで、ぜんぶ奥様とふたりで完璧に。

 

そのため、ランチは週に4日だけの営業なのだそうです。仕込みや仕入れがあるそうで。それはそうですよね。

 

なんの保証もない厳しい世界だけれど、常連さんのファンがたくさんいらっしゃって、いつも予約でいっぱい。コロナになって人が減っているから空きがあったところに私は偶然すべりこんだのでした。

 

こんなに職人肌というか芸術家肌で、理想を追求して、自然な楽しい様子でお仕事をして、お客さんにものすごく愛されている人が、いるんだ・・・

 

目の前で7品を作ってくれたシェフのその姿に、もう、ただ、感動していました。

 

感動しただけじゃなくて、おなか一杯になっただけじゃなくて、ものすごく元気がチャージされた感があって。

 

娘とふたりで、そのあと、すぐ近くの浄智寺からはじまる大仏ハイキングコース5キロ弱に突入しちゃいました。かなりの山道で、普段なら行かないのだけど、あのすごいランチを食べたら、なんだか不思議なエネルギーをもらった感があって、すごくハイキングに行きたくなった。

 

山深い緑の中をずっと歩いて、聞こえるのは木の葉がゆれる音と鳥の声だけ。1時間以上あるいて大仏の近くまで着きました。f:id:mimeyama:20210611002015j:image
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大仏は寄らずに長谷寺の紫陽花を見て帰りました。

 

自分の理想を徹底的に追求して、お客様に愛されながら自分のペースで仕事していく。それができたら最高だと思っているのだけれど、それを目の前でやっている人に出会ったことは、ものすごく刺激になりました。

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あの日から、少しだけ丁寧に料理しています。