音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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ピアノアドベンチャー翻訳者 近藤真子先生のセミナー

昨日は、ピアノアドベンチャーの翻訳者である近藤真子先生のセミナーを受講しました。先生は音楽教育の博士号を持っていらっしゃるそうです。なかなか博士号のある講師の先生はいないので、楽しみにしていました。

 

私はペースメソッド以降のアメリカの教本の遷移について研究しています。近藤先生のセミナーはペース系列のものとしてバスティンとの違いが明確になりました。


日本のピアノ教本に関するセミナーではブルーナーなどの理論的背景まで聞くことは稀です。私がブルーナーの話をしても、「誰それ?」というリアクションが多いように感じていましたが、近藤先生はらせん学習の話とも関連してブルーナーの話をしてくださいました。


バスティンなどの先行して翻訳されているメソードではドレミよりABCが目に入りやすい表記になっています。

使用する先生方が個々に補ってドレミを教えている現状だと思いますが、

うっかりそうした「補い」をせず、テキストにABCの表記がとても大々的に書いてあるので、ドレミをレッスンで教えないでABCに切り替えたほうがいいのではと誤解して生徒の音感の発達が遅れてしまった事例の報告を受けています。

 

アドベンチャーでは翻訳の際に、ドレミの表記がかなり中心に据えられています。これはドレミを使った日本のソルフェージュの伝統の価値を理解されているものだと解釈しました。非常に良かったと思っています。

 

ABCはの使用は今後スタンダード的に重要なものですが、音感育成にはドレミで歌うことが必須ですので、そこが確認できてよかったです。

 

日本ではミドルCから導入するメソッドがほとんど売れ筋を占めているので、アドベンチャーのように固定ポジションの弊害をはっきりと明言し、行わないメソッドは私の把握する限り、さほど使われてきませんでした。

 

固定ポジションの弊害は、理解がなかなか難しい面でもあります。プレリーディングにしても見たことがなく何なのか不気味に思っている方がたくさんいます。バスティンに慣れている方ならわかりますが、オルガンピアノやぴあのどりーむなどからの移行だと、講師にとっても理解は簡単ではありません。50年ぐらい日本のピアノ教育はアメリカより理論的には遅れている面があります。もちろんアメリカがなくしてしまった良い面やヨーロッパから輸入してアメリカには入らず日本だけにきちんと入ったものなどもあります。

 

アドベンチャーを使えばすべてがバラ色、という風にも思いません。特に日本語の童謡がないのは翻訳教本の場合どうしようもないことです。

しかしアドベンチャー日本にはない指導法を学べる材料はたくさんある教本ですので、使わなくても知っておくことは大切だと思います。