譜読みの本を書いています。移動ドと固定ドについて調べておりまして、学校教育の唱歌・音楽の時間では、ずっと日本では移動ドが基本であるという建前で来たんですね。いったいそれはどこから始まったのか。明治時代の唱歌教育からです。ルソーの発明した数字譜が移動ド。しかも学問に無知な民衆でも覚えやすい簡単なものでした。そこからギャラン=パリ=シェヴェ法、トニックソルファ、コダーイメソッドと、移動ドの系譜が続いていき、トニックソルファがアメリカの学校教育に普及していたところから日本に輸入されます。
しかし移動ドは、ピアノ教育では使いづらいものでした。転調多いし、20世紀になってからは現代音楽が出て無調なども出てきたので。学校ですべての子どもに歌を教えるならば移動ドもメリットがあります。しかしピアノの譜読みをして弾くには固定ドのほうが便利。
そしてピアノ教育の現場では固定ドが普及。専門教育を受けた人の多くが固定ド。音楽の先生の多くが固定ド。ピアノのおけいこに通っている子の多くが固定ド。だんだん移動ドの勢力が弱まり、現在に至っています。
明治時代の音楽教育のようすについて、とてもよくまとまった本があったので資料として使っています。数字譜をヒフミヨイムナと読む移動ド的な唱法で歌っていた時期のことなども、大変わかりやすく述べられています。
- 作者: 前田紘二
- 出版社/メーカー: 竹林館
- 発売日: 2010/10/20
- メディア: 単行本
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