あけましておめでとうございます。
2010年12月25日にアメリカから帰国して1年、お正月明けの引越しにはじまり、自分自身の仕事や生活の建て直しをはかりつつも、地震と不景気に見舞われ、渡米前とは変わってしまった日本の状況に戸惑いつつ、しかし日々走り続け、待ったなしで時間は流れたという感じで年が明けました。
年末年始というのは、音楽ライターという仕事をしていると、行きたいライブがたくさんあり、しかし家族をもっていると家をあけにくく、ある意味両立がしんどいなと思う時期です。年越しそばをつくり家族で紅白をのんびり見ている幸せ。その一方でカウントダウンライブいいなぁと思う自分もいる。
しかしそんな迷いにひとつ明快な答えを出してくれる本がありました。
年末に読んだんですが、「老後の生活破綻」という、ちょっと怖いタイトルの本です。
80代まで長生きした場合、どういうリスクが現実として想定されるのか、という話が豊富な実例とともに書いてあります。
健康状態が悪くなり、外出がおっくうになり、誰ともつながりのある人がいなくて、テレビしか娯楽がない。
さらに所持金が底をついたり、住む場所がなくなったり、入院したけれど入院費が払えなくなったりしても、助けてくれる家族も友達がひとりもいない。
読んでいるだけで悲しくなってきます。どれほど寂しいことか。
悲しいし気が重いんですが、まずは自分でそれに備えるということが非常に大事だと痛感しました。
音楽にかかわって生きていると漠然とした不安があるんです。音楽さえあればもう何もいらないと思う瞬間がある一方で、よく考えれば音楽をやるために必要な土台みたいなものもあるから、それも冷静に考えておかないと、って。
幸福感は、経済状態、健康状態、つながっている人(家族や友人)、この3つの要因に大きく左右されるそうです。
これをベースに考えて自分の音楽活動を組み立てていけば、そんな悲惨なことにはならないと思われます。
まず、経済力。かっこよくはないかもしれないけれど、女性の場合は、養ってくれる夫を見つけるのでもいい。ミュージシャン志望なのに別の業種に就職するのは心残りかもしれない。演奏家でありたいのにレッスンなんてやりたくないかもしれない。しかしとにかく暮らしていくための経済力が大事です。それを考えたうえで音楽を続ける必要があります。
そして健康状態。練習や作曲や本番などの音楽活動に没頭しすぎて、体力づくりや健康チェックがおろそかにならないように。練習時間を減らしても、仕事の受注を多少減らしてでも、健康状態の維持には気を使わなければ。
そして「つながっている人」(家族や友人)。家族がいるということ、人付き合いというのは、音楽活動への時間もエネルギーが減る部分もでてきます。しかしそうした人のつながりが自分に与えてくれるものは大きいのです。人とつながることに対する時間や手間やお金のコストが、過大になるのも問題ですが、音楽に没頭しすぎて人をどんどん遠ざけるのは、ある意味、危険が伴います。
音楽というのは、仕事にもなりうるし、趣味でもあるし、お金になる場合もあるし、お金を消費するものにもなるし、人とつながるきっかけにもなれば、人を遠ざけたくなる要因でもある。
どんなふうに音楽を自分の人生に組み込んでいくのかは、人それぞれだと思います。ただ、音楽には魔力みたいなものがあって、没頭しすぎて自分の人生に大事なことをほったらかしにしてしまう危険があります。作曲家の生涯を追っていくと、たいてい、音楽第一で、その他がほったらかしになりやすい。わかっていてその道を進む人を止めることは誰にもできませんし、すばらしい作品が残せれば、それはそれでいいじゃないかという気もします。
それらを全部ふまえて、自分はどうなりたいのか、考えればいいわけです。
参考になる視点をこの本から得ることができました。

- 作者: 西垣千春
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