音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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フォープレイの新作「?」

X(ten)
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フォープレイ, フォープレイ feat.マイケル・マクドナルド

私がフォープレイで一番すきなのは、初期のアルバムです。その頃の曲は、最近もしょっちゅうスムースジャズのラジオ局KKSJでかかっているので、「へぇ〜やっぱりこの時期の曲が人気なんだ」と思っていました。

ギターがラリー・カールトンになってからは、特にあまり聴かなくなっていたのですけれど、ラジオで新作から…といって流れた曲が、なんだか初期のアルバムで私が好きだった感じに似ていたので、注文してみました。買ってみたら、1曲目でした。いかにもボブジェームスらしい、ポップで洗練された曲です。

ファンなら誰でもご存知かと思いますが、初期といまではギタリストが変わっているんですね。それはそうなんだけど、なぜか初期のギターがリトナーだったころに近い印象を受けました。ギターのソロなんか聴くと、いかにもブルージーで、あ〜やっぱりリトナーじゃなくてラリーなんだ、と思いますが。

私はとにかくアメリカに来てからスムースジャズ漬けで、毎日何時間も聴き続けています。フォープレイの今回のアルバムは、他のスムースジャズと比べてすごく違うものを感じました。曲のつくりかたも、「メロディ→ソロ→メロディ」みたいな単純なものではなくて、メロディのなかにいくつもの核があって、それがあちこちに糸をひいてつながっているといいますか、とても立体的な構造をしていて、それが小難しくなく、素敵な模様のようで、思わず聴き入ってしまう。

それからネーザン・イーストのベースの音が、ひどく頭に響きました。もちろん良い意味です。ただのベースの音なんだけれど、合唱やオーケストラを聴いたときに頭にウワンと響いていくる、あの感じが、ベースからびんびん出ているのです。多分、「倍音が多い」ということなんでしょうか。音響学的に正確かどうかわからないので、はっきりしたことはいえないのですけれど。

そしてボブ・ジェームスの職人芸なのでしょうが、ストリングスやヴォイス系の空間を埋める柔らかくて響く音色が、いつもたっぷりと、控えめに、心地よく流れています。弾きまくらない、叩きまくらない、スペースを生かすバンド、ということはフォープレイがデビューした頃からいわれていました。その空間に、倍音をうま〜く入れてあって、聴いていて、脳の奥のほうで、自律神経のスイッチが「オフ」になってしまう感じです。

もちろん演奏はいい、でもそれだけではなくて、曲そのものも面白い、そんなアルバムだと感じました。