音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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カークウェイラム@サクラメント ラディソンホテル

ベイビーフェイス・ソングブック
ベイビーフェイス・ソングブック
カーク・ウェイラム, デイヴ・コーズ, リック・ブラウン, リッキー・ピーターソン, ノーマン・ブラウン, チャック・ローブ, クリスチャン・マクブライド, アレックス・アル, リル・ジョン・トバーツ, バシリ・ジョンソン

 先月も行ったサクラメントのラディソンホテル。今月もスムースジャズのイベントがあったので聴いてきました。今回はなぜか当日券をホテルで買ったら前から10列目だったので、前回よりもずっとじっくりと聴けました。

 この日のお目当てはなんといっても、テナーサックスのカーク・ウェイラム。いちおう、他にもウェイマン・ティスデイル、ジョナサン・バトラー(g)、ブライアン・シンプソン(key)の3人もフィーチャーしている形なんだけれど、いちおう一番メインはカークでした。

 私は彼のライブを見るのは初めて。先入観というかイメージとして、カーク=洗練されたスムースジャズのテナーの人、という認識だったんです。
 しかし!!! ステージに出てきた生カークは、超面白い人で、たいへんなエンターテイナーでした。

 お客さんたちは、カークの姿が舞台袖からちらっと見えたら「うぉおおおおおお」と叫んで総立ち、猛烈な拍手。やっぱり人気あるんだなあ。こっちのスムースジャズのコンサートって、年齢層が高くて、30〜50代ってところですけど、ものすごいノリのよさです。
 この日のカークの衣装は、真っ白な麻のシャツにズボン、それにちょっとこじゃれた帽子。重たそうなテナーを軽々と持って颯爽と歩いて登場するやいなや、帽子を他のメンバーにかぶせたり落としたり、なにやらふざけているんですよ。もちろん演奏しながら!! 

 でも、ずっとお笑い路線ではなくて、ちょっと真面目に吹くと「うわぁ〜」と吸い込まれるような柔らかくて洗練されたサックスなんです。しかし、フロントに並んだ出演者4人でダンスのステップは踏む、お客さんに手拍子をしょっちゅう求める、ソロの最後に1分以上も音を伸ばして、まわりのメンバーに「ブレス!!」(息をしろ!)と言われながら大喝采を浴び、る、歌もどんどん歌っちゃう。しかも、低くて渋〜い声でも、アースウィンドファイアーみたいな高い裏声でも、どっちでも完璧に聞かせちゃうんです。この人、歌もめちゃくちゃうまいじゃん・・・と絶句。そんなふうにやたら感心しているのは私だけで、お客さんはヒューヒューと大歓声、踊りまくり。
 サックスの演奏はいうまでもなく素晴らしかった。音のすみずみにまで神経がゆきわたったソフトな音色は、まさにワンアンドオンリーで、うっとりです。しかし、それだけでなく、カークは渋くてダンディー、それでいておちゃめな雰囲気を漂わせ、それはそれは愛すべきキャラクターをステージ上でつくりあげていました。

 
 カークに限らず、ほかのウェイン、ジョナサンも、お客さんの気持ちがステージに集中するまでは、演奏はそこそこに、とにかく「盛り上げ」に徹してました。そしてお客さんたちが集中したころには、スイッチを切り替えて、ほれぼれとするような見事なソロを聴かせてくれるんです。でも、いつまでもえんえんとはやらない。エンターエイナーであり、職人であり、芸術家である、そのバランスが絶妙でした。

 もうひとつ特筆したいのがウェイマン・ティスデイルについて。彼はものすごい巨体で、カークよりも頭ひとつ分大きいほど。NBAプロバスケットボールの選手だったそうで、身長が2メートルあるんだそうです。彼はベーシストなんですが、ベースラインは弾かないベーシストです。高い音の出る小さなベースで、メロディを弾くんですね。だからバンドには彼とは別にちゃんとベーシストがいました。

 
彼の曲はスムース系らしい品がありながら、とてもファンキーで、最近ラジオでかかりまくっています。なぜベースでわざわざメロディをやらなければいけないのか、という素朴な疑問が最初は湧いてきましたが、スラップの「びよ〜ん」という音のはじけ具合や、「べ〜ん」というシャープな音が、独特の魅力をかもしだしていて、実にカッコよく、自然なんです。
Way Up!
Way Up!
Wayman Tisdale

2曲目の get down on it が毎日ラジオで流れている人気の曲です。コンサートでも、観客みんなで合唱しました。