音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

セミナースケジュールはこちらです。 山本美芽オフィシャルサイト

松居慶子さんライヴ行ってきました(2)

世界中を演奏旅行している慶子さんは「日本が一番好き」だと語ります。
彼女の音楽はスムース・ジャズのスタイルといえると思いますが、
それでも、彼女の演奏からは、日本的な美しさを、確かに感じるのです。

クラシックでもジャズでも、西洋音楽をやっている人には「日本人は
本物でない」「これだから日本はだめなんだ」みたいな論調がどこかにあると思うのですが、そういう中にあって、慶子さんみたいに話してくれるアーティストの存在は、とても大切に感じられます。

私事なんですが、年齢を重ねるたびに、日本の自然や文化の美しさと気高さに感動すること、癒されることが増えてきました(ってオバサンくさい書き方ですが)。ダージリン紅茶もいいけど、5月に飲む鹿児島の新茶もいい。フランスから来たパティシエが作ったピエール・エルメのケーキもいいけれど、和菓子屋さんで売っているわらびもちも最高。ステンドグラスのあるヨーロッパの教会は華麗だけど、鶴岡八幡宮の境内のすがすがしさも、捨てがたい。イブニングドレスもいいけど、着物のもつ華やかさ、渋さは独特。西洋のオーケストラの壮大な響きもいいけど、たった1音や間に魂を込める日本の音楽もいい。日本っていいなあと思うことは、エンドレスに浮かんできます。

慶子さんも、きっと似たようなことを感じているんじゃないかな?
と思うと、それだけで、なんだか少し、うれしくなります。

ちょっと蛇足になりますが、ピアノ教育のことを追いかけたりすると、どうしても、日本は本場でないから、間違ったことを一生懸命やっていたりとか、試行錯誤の歴史があって、「これだから日本は…」と、ついつい書きたくなることがあります。だけど、1200年前に日本に入ってきた雅楽は、既に中国本土では伝承が絶えてしまって、日本で日本流に消化したもののほうが今日まで残っているんですよね。お能だって、600年の歴史がある。ピアノなんて、まだ、日本に入ってきてから100年ちょっとしかたってない。あと500年たったら、果たしてどこが本場になっているでしょうねえ。雅楽だって、入ってきて100年ぐらいのときは、まだまだ未完成だったんじゃないかな。ピアノだって、入ってきてたった100年なんだから、それでうまくいかないからって、「だから日本は」みたいに思うのは、ちょっと気が短いよね、と自分に言い聞かせる今日この頃なのです。