先日、ムジカノーヴァの書評のためにある本を読んでいたところ、平均律についての記述が出てきました。ご存知の方も多いと思いますが、ピアノが使っている平均律というのは、いろんなつじつまを合わせるために、ちょっとだけ響きがにごっていて、弦楽器とか管楽器とか合唱の響きとは違っちゃっています。とはいっても、ピアノの影響力はあまりに大きく、キーボードまたはピアノと一緒に演奏する場合は、たいてい全体が平均律に影響、ある意味では「汚染」されているような部分があります。民族音楽なんかに民族楽器の音がでるキーボードを入れて合奏したりすると、なんだか微妙にヘンな気がするのは、キーボードの平均律に、民族音楽で使っているピッチが影響されされちゃうから、という事態も充分起こります。
確かに平均律の楽器が入っているときと、平均律の楽器が抜けているときでは、音の空気が違うような気がするなあ。と、その本を読みながら思ったのです。
そこではたと気づいたのですが…
私が昔から好きで聴いているドラマーの則竹裕之さんと、サックス奏者の本田雅人さんが、一緒にライブに出ると、たいてい、他の楽器はお休みして、ドラムとサックスのふたりだけで即興をずーっと続けて盛り上がり、これが、いつ聴いても、不思議なほど迫力があるんです。まあ、それはそういうものでしょう、と思いつつも、何か理由はないのか? と、長年ずっと秘密を探していました。
ギター、ベース、キーボード、ピアノは、平均律で調律しています。サックスもそれに合わせているのではないでしょうか。でも、サックスとドラムだけになったら、平均律というピッチ面での制約がなくなる。
ほかにもいろいろな理由はあるのだろうけれど、特にベースレスで(ベースも平均律にチューニングしているはずですので)、あえてドラムだけとサックスで即興をすると、独特のインパクト、熱気、空気、といったものが出せるのは、平均律レスな楽器編成だからではないか・・・チューニングと平均律の楽器についてインタビューであれこれ質問してみたことってこれまでなかったんですが、案外、聴いている人への影響は大きいのかもしれないし、注意していきたいと思います。