音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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アドリブ最後の5月号にT-スクェア「時間旅行」の原稿書きました

なんだかあっという間に売り切れ状態らしいアドリブ5月号・・・。といっても私はアメリカにいるのでよくわからないんですが、アマゾンでも買えなくなってますね。ジャコが表紙、そうそう松下編集長、そうこなくっちゃ!



 ADLIB (アドリブ) 2010年 05月号 [雑誌]
ADLIB (アドリブ) 2010年 05月号 [雑誌]
スイングジャーナル社


この記念すべき最終号に、T-スクェアの新しいアルバム「時間旅行」を聴いて1ページ書くというお題をいただいたのです。音源は、ネットで送っていただいて、無事ダウンロード成功しました。itunesを使い慣れていたのが幸いしました。

アルバム全体については、アドリブの記事のなかでレビューを書きましたのでそちらをご参照いただきたいと思います。

でも1ページでは書ききれないんですよね!
ここでは、記事では触れられなかった、河野啓三さんの盛り上がり系のアルバム9曲目「AiAisa」についてご紹介したいと思います。

もしかしてネタバレになるかもしれません。聴くときの楽しみにとっておきたい方はお読みにならないでください。


ドカスカドカカン! というカッコいいタム。そしていかにもスクェア〜なスピード感のある都会的な8ビート、まるでインコグニートか!? というような縦横無尽に動くシンセストリングスのイントロに始まり、ピアノが華麗にコードでAメロをはじめ、途中からEWIがほわ〜んと入ってメロディを歌いはじめます。

おっと!? この感じは!? 超スクェアっぽい!? そこへ、かすか〜に80年代のディスコの香りのするサビが。微妙に切ないようなそうでもないような、まるで、松本圭司さんの「A dream in a daydream」を思い起こさせるような。短調? 長調? 一瞬メジャー?と思ったらマイナー? と揺れ動き、非常にまぎらわしく判別不能で、その不安定さがなんともいえず魅力的。

そして間奏?? に入ると、安藤さんのギターが炸裂(安易な表現ですみませんが、ご容赦)。

もう完璧にスクェア・サウンドのツボを押さえているんです。

実は私、原稿を書きおわってから、1週間ぐらいこの曲だけずーーーーーーーーーっと毎日朝からリピートし続けてました。今も1日10回ぐらい聴いているかも。何かやめられない、もう1回、もう1回、と聴きたくなってしまう、何か麻薬的な仕掛けがあるんでしょうか。もしかして世代的なものなのかなぁ、昔なつかしいサウンドの要素がうま〜く隠し味になっているのかも。

でもまったく古くさくなくて都会的なんですよ。でもディメンションの都会っぽさとはぜんぜん違っていて、もっとずっとポップで、メロディアスなんだけど、都会的なところが、スクェアっぽい。うーむ。スクェアっぽいって何? ほんとに。河野さんにスクェアっぽいってどういうことだと思いますか、って質問して、項目を30個ぐらいあげてもらいたい!!! と真剣に考えたくらい。

これまで作曲家としての河野さんについて研究が足りなかったと、この曲を聴いて反省しまして、スピリッツ以降のアルバムをいま引っ張り出してきて、河野さんの作った曲ってどうだったっけといま1曲ずつ聴きなおしています。

工藤由美さんのブログをご覧になりましたか。取材で、安藤さんがあまりしゃべってなかった、と。そりゃそうかもしれない、と思いました。若手が、ここまでスクェアっぽい曲をつくってきた。それらの曲が1曲目(河野さん)、2曲目(坂東さん)になっていて、安藤さんの曲は、すごく素敵なのに、1曲目じゃないんですから。安藤3、伊東2、河野3、坂東2というバランスなのに。

音楽って自由なはずなのに、過去にしばられた「スクェアっぽい」曲をつくら「ねば」ならない、としたら。それは音楽家にとって果たしてどうなのか? バンドをやっていくうえでの宿命みたいなもので、避けて通れないことかもしれませんが。

でも、そうやって、ある程度の枠をあえて設定しながら作ってくれたスクェアの新作が届いて、「これを聴きながら、今年の夏はどこに行こう」と考えるその時間が、かけがえのないプレゼントに思えました。

これを聴いている間だけは自由。なぜか、そう思える、不思議なカタルシス。そういえばアルバムタイトルが「時間旅行」・・・もしかして、作り手の狙いにまんまとはまったんでしょうか。ちょっと悔しいような気もしますが、ま、いいか。


時間旅行
時間旅行

ユーチューブで最近のスクェアのライブって何かないの? と思っていたら、「Rondo」の演奏を見つけました。坂東さんのドラムって、ノリがずっしり、しかもシャープな味わいがあります。