音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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娘は初めて、私は久しぶりのピアノ発表会、ぶじ終了!!

 終わりました〜発表会!!! 娘は、バレエやタップでは経験していますが、ピアノの発表会は初めて。私は、えーと、大学院のころに出たのが最後のような気がするので、15年ぶりぐらい。

 1月ごろでしたでしょうか、娘が通う日本語補習校で知り合った日本人でピアノの先生をしている方から、その方の主催する発表会に出ませんか? と誘っていただきました。楽器店にある大きな部屋を会場にするので、参加費はタダ。営業の一環のようです。タダときいて、「あっ、じゃ、うちの生徒さんと、私の娘、お願いします。それと…私も出たいんですけどっ」と即、出ることにしました。

 娘はそのころさっぱり練習していませんでした。週に1-2回でしょうか。とにかく楽譜を読むのが面倒で面倒でしょうがないらしいのです。そこで思い切って、アメリカの幼稚園の卒業式の入場行進で覚えて、それ以来、耳コピーで弾いていたエルガーの「威風堂々」に決めました。原曲はト長調ですが、ファーミファソーレード〜とミドルCポジション、つまりピアノの真ん中のドを基点に弾きやすいへ長調でコピーさせます。これで、真ん中のドより上は右手、ドより下は左手でカバー。途中、高いシのフラット(B)が出てくるんですが、そこは右手でなんとか跳躍してクリア。メロディーだけをひとりで弾かせていましたが、私が伴奏をつけたほうがカッコいいので、連弾に。超耳コピで、いいのかな〜まあいっか、という気張らないスタンスでした。

 問題となったのは、娘はメロディを弾き、私は和音で伴奏なので、メロディがすぐに埋もれてしまうこと。腕や手首を使って、朗々とした音を出す練習・・・までたどりつけたのは、最後の一週間でした。

 もうひとりの生徒さんは、うちの娘よりひとつ下で、やっぱり発表会は初めて。何が弾きたいときうと、ねこふんじゃったが弾きたい! と断固主張するのです。とにかく無事に初ステージを終えるのが何より大事ですから、好きな曲を弾かせてあげようということで、曲目はねこふんじゃったに決定。

 そして私は、とにかくリハビリモードですし、練習時間なんて一週間合計で1時間ぐらいになるのは目に見えていますから、高校時代にレッスンした曲のなかから、娘が「これ好き」といったショパンの「華麗なる大円舞曲」を選びました。ほんとは、ラヴェルソナチネとか、ドビュッシー前奏曲集なんかから選んで弾いてみたかったんですが、子どもの発表会に混ぜてもらうには渋すぎですよね。華麗なる大円舞曲は、私には高速連打がつらいですけど、まあ派手だから比較的眠くないし、次から次へといろんなテーマが出てきて飽きないし、あまりに長いってわけでもないし、手ごろかなと。

 生徒さんのほうは仕上がりはばっちりで、ぜんぜん心配いりませんでした。娘は、ラスト一週間ぐらいで追い込んでなんとか形になったかな。私は、とにかく弾く暇がなぜかなく、最後の一週間ぐらいは悪夢でした。弾けば弾くほど、連打が外れるわ、間際になって譜読みの間違っていた音に気づいたり、楽譜のペダリングを見直すといつのまにか自己流で勝手に踏みかえちゃっていたのが、ショパンの指示では踏み変えなしになっているのに気づいたり、もっと速く弾きたい〜とテンポをあげて弾いてみては玉砕、ゆっくり弾いてみたもののこれじゃ地味だからテンポあげたい〜でも3日でテンポあげるのは無理〜だの、なんなんでしょうか、あのつらさは。

まあおそらく、舞台で弾くという想定で練習すると、ふだん気にしていなかったことが次々に気になりだし、ひとつ解決するとさらにあれに気がつき・・・それって、終わってみれば「いっぱい練習してうまくなったじゃん」ってことなんでしょうが、渦中にあるときは、「いったいぜんたいどうしてこの曲なら大丈夫って考えちゃったんだろう私?? もっとうーんと楽勝で弾ける曲をなぜ選ばなかったんだろう〜!!!??」と深くため息。結局1度もピアノをさわれなかった夜、家族が寝静まった1時ごろ、ソファに座って楽譜をひざの上に広げ、両手を座席の上にバタバタ動かしながら「たんたららん、たんたららん」とぶつぶつ歌いながらイメージトレーニング。やらないよりはたぶんまし、というかそういうことでもいいからやらないと心配で眠れない(涙)。

 結局、当日は夫に運転してもらって会場に向かい、控え室を探して娘と一緒に着替え、開演まではうろちょろする息子を追いかけ、本番が始まってからは緊張してきましたが、娘を緊張させるわけにもいかないので平常心、平常心。順番は、娘と私が連弾をして、その後、私のソロ、それからまた他の生徒さんといった具合で、子どもさんのあいだに入れてもらいました。娘は、特に大きなミスもなくふだんどおり弾いていたのでびっくりでした。あとで「緊張しなかった?」と聞くと、「べつに。だって、前に出て弾くだけじゃん」・・・・。そりゃそうですけど。以前、初めてのタップの発表会に出たくないといってぐずって泣いて、でも発表会が終わってみたら「楽しかった」という経験をしていましたので、それがやっぱりよかったのかも。私が教えている生徒さんも、堂々とした演奏ぶりで、ばっちり。子どもたちがこんなにちゃんとやってて、ちょっと、大人の私、どうしよう。とにかく弾くしかない!! みなさん聞いてくださってありがとうございます!! これ、私の演奏はたいしたことないですけど、曲はすばらしいですよね〜!!! ここの部分が私好きなんですよね〜!!! おっと、ここフォルテ、フルコンだと響きが気持ちいいですよね〜、おっともう最後、とにかく終わりよければすべてよしってことで! 等々、ぶつぶつ唱えたわけじゃないんですがそんな心境で、弾ききりました。

 当日までも、当日も、ものすごく疲れました・・・が、苦労した分、私も娘も、ピアノとの距離が縮まった気がします。発表会が終わった次の日ピアノに向かったとき、なんだか以前よりもやろうと思ったことがスムーズに指に伝わり音になる感覚がありました。
うちの娘や生徒さんも、自覚しているかどうかわからないけれど、やろうと思ったことが、ぐっとスムーズにできている感じです。発表会で弾いた曲は、いつでも、いちおうさらっと弾けるレパートリーに昇格したような実感もあります。とにかく発表会を企画してくださった先生に感謝です。

 こうなるのがわかっていたので、とにかく出たい! 出させてください!! と叫んでしまった私なんですが、やっぱり出てよかった。発表会って、ほんとに、出るとうまくなりますね。疲れますけど。プロで毎日本番で弾いていると、どれだけ磨かれるんでしょう・・・。とにかく場数が大事なんですよね、演奏って。

 演奏を客席で聴いていた夫が、片腕で息子を抱っこしつつ、もう片方の手で必死に写真を撮ってくれていました。娘は可愛く写っていて一安心。私は、・・・前髪付近が立っていて、なんかボサボサ。いちおう黒いベルベットのワンピースを着ていたんですけど、こ、この頭じゃあ・・・とほほ。いや、まあ、誰も気にしてないかしら。弾く前に、鏡がなくても、手ぐしでさっと髪を整えればよかったんでしょうね。今度からは、そうしようっと・・・。

 なんだか自分のことばかり書いてしまいましたが、出演していた生徒さんたちの様子を少し。日本と違って、6歳以上の生徒さんだけ、主に小学生から中学生が出演していました。みんなそれぞれ音もきれいで、リズムもきちんとしていたし、背伸びしすぎで聞いていてつらいような選曲もなく、安心して聞ける発表会でした。家の事情で途中で帰らなければいけなくて、全部聞けなかったのが本当に残念です。
 そしてお父さんお母さんたちが、自分の子どもだけじゃなく、みんなの演奏を「どんなふうに弾くのかな」と暖かく見守っている雰囲気がとても素敵でした。

 秋にもまた開催されるというので、何を弾こうかと考えるのが楽しみです。ショパンのバラードをもう一度おさらいして仕上げるか、それともノクターンの何かに新しく挑戦してみようかな。英雄ポロネーズもほとんど弾けるようになったんですが、最後のほうの左手の連打が、うーんちょっと、まだ発表会で弾くには自信がないんですよね。3年ぐらい前からちびちび弾いているから、いったい何年がかりなんだか。それにしても、こんなに楽しいのは、きっと、誰も私にピアノを弾けといわず、弾きたいときに弾けばいい、いつやめてもいいからなんでしょうね。だけど、10代20代のころに「来週までに譜読みなんて絶対無理」と泣きそうになりながら必死に勉強した曲が、いまとなっては貴重なレパートリーになっているのも事実。まあ、そんなものなんでしょう。

しかし、生徒さんが1人と娘が1人だから自分の練習もなんとかできましたが、これで生徒さんが多かったら・・・、当日の運営を自分でやっていたら・・・、ちょっと気力が限界のような気がしますね。