音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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カリフォルニアで録った本田雅人のアルバムをカリフォルニアで聴く

アクロス・ザ・グル-ヴ
アクロス・ザ・グル-ヴ
本田雅人,ボブ・ジェームス,マイク・ミラー,ネーザン・イースト,ハーヴィー・メイソン

もうかなり前に出たアルバムなんですが、最近になって初めて封を切って、車の中にセットして聴き始めました。ふだんはひたすら毎日青空のもと、FMのスムースジャズを聴いている運転席。そこで本田さんの音、本田さんの曲、だけどサウンド全体はフォープレイのメンバーが参加していて、とってもスムース。ものすごく不思議な気がしてなりません。

日本のフュージョンのキメキメ系の曲って、カリフォルニアで、のんびり運転しながら聴くと、ちょっと合わないなと感じることが結構あります。刺激や密度が濃すぎて、東京のイメージがどうしても浮かんでくるからです。そういう刺激的なところが好きなんですが、カリフォルニアには、合わない(笑)。サンフランシスコとかロサンゼルスの片側5車線も6車線もあるハイウェイをレース気分で猛スピードの車線変更を次々に繰り返していたら、合うかもしれませんが。

 本田さんの音楽も、ある意味、密度が濃くて刺激が強いから、こっちには合わないかなと思っていました。でもこのアルバムは、すごく合います。今日なんか、窓を開けて走っていて、娘と一緒に「うわー、気持ちいい風だね」なんて言っていたんですが、まさにそんな気分にぴったりのアルバムです。
 
 十年前には、日本で本田さんのアルバムを聴き、本田さんも日本をメインに音楽活動されていたのに、いまは、本田さんがロスでアメリカのミュージシャンとレコーディングしたアルバムを、アメリカで聴いている自分、そのことがなんだか不思議な気もするのですけれど。その昔は、本田雅人とフォープレイは、日本のフュージョンと海外のフュージョンといった具合にお店の棚も別れていたのに、それがごちゃごちゃになっていること自体もなんだか楽しいです。

 アルバムを聴きながら、ジャズライフのレコーディングレポートやインタビューの載った号も一緒に読んで楽しんでいます。「マサトは誰にも似ていない」とか「すごい才能の持ち主だ」とアメリカのミュージシャンが言ったという話を読んで、まあアメリカ人はヨイショが上手ではありますが、これはお世辞じゃないはずだ、「そうでしょう」と思わずにやけてしまいました。

 その記事を読んでから、また今日もアルバムを聴いていたら、このやさしくて爽やかな音は何? ソプラノサックス?? と、ふと考え始めたらはまってしまい、耳を澄ませば澄ますほど細部にわたって魅力的なので、目的地についても降りずに聴いていました。確かに、本田雅人は誰にも似ていない。こういう音を出す人も、こういう曲の人も、他には誰もいないな、と改めて思いました。そのことが、アメリカでこっちのミュージシャンと録音したことで、改めて浮き彫りになったのかもしれません。
やはり、自分の曲と自分の音をこれだけ持っていれば、どこに飛び込んでいっても大丈夫なんでしょう。さすが、頼もしい限りです。

 このアルバムを録音したのは1年ぐらい前だから、もう次の作品をつくっているのかな? なんにせよ、本田さんの素晴らしいチャレンジ作、もう少し堪能したいと思います。