音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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ベーシスト、ウェイマン・ティスデイルの「リバウンド」

Rebound
Rebound
Wayman Tisdale

 フュージョン界でベーシストといえば、マーカス・ミラーにスタンリー・クラークが有名どころですけど、私がアメリカに来てから一番しっくりくるなぁーと思ってよく聴いているのが、ウェイマン・ティスデイルのアルバムです。ベースでメロディを弾いてしまう、主役系(←勝手に命名、すみません)のベーシストです。

 いちどサクラメントに来てくれたことがあって、そのときライブで本人を見て、あまりに体格がよくて身のこなしがしなやかなことに驚き、スポーツ系ニュースに疎かった私は、彼のプロフィールを読んではじめて、彼がプロバスケットボールの花形選手からベーシストに華麗なる転進をとげたことを知りました。

 最新作が出ていたのをFMで聴き、おおー大人っぽくてファンキーですごくいい感じ! ・・・と、わくわくしながらCDを注文。届いてからも忙しくて、BGMにしながらずっと毎日聴いていました。ファンクとR&B風味のきいたメロディアスなサウンドは相変わらず、でもなんだか底抜けに明るくてイケイケだった前作よりは、ちょっと憂いがあるというか、メランコリックな陰影があって、それがまたいいなーと思っていました。

 ブログでも紹介しよう! と思ってウェイマンのサイトを訪れると、なんと・・・

 ウェイマンは、2008年に右足の膝上の部分から下を手術で切断したのだそうです。
 
 巻かれた包帯が痛々しいけれど、やけに明るいウェイマン本人の近況あいさつ画像もHPにあって。小さい文字の英語でびっしり埋まったアルバムのジャケットをよく読んでみると、Thanks for allowing the leg to break …けがをしたことがきっかけで足の骨のがんが発見されたそうで、けがをした幸運を神様に感謝したい・・・と。

 あなたも、うまれかわれるかもしれない・・・

 という日本語の女性の声が最初の曲のイントロに入っていたのですけど。reboundは、それこそバスケのリバウンドでもあり、辞書をひくと回復という意味もあって。

 ある意味、再出発としてとてもメモリアルというかターニングポイント的なアルバムになったのだと思います。DAVE KOZをはじめとして、若手の才能豊かなサックス奏者 Darren rahn、カントリーの大御所Toby keith(この人の声が渋くてなんともいい味わい)、キーボード奏者のブライアン・シンプソンなどなど、多方面の才能をうまく引き寄せて、とても豊かで深みのある音楽になっています。

 それにしても、ステージでヒゲダンスもどきをしていたウェイマンの陽気なパフォーマンスが記憶に鮮明で、ほんとうにショック。でも、こうして演奏活動を続けてくれていて、よかった。