読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

セミナースケジュールはこちらです。 山本美芽オフィシャルサイト

ひとりで頑張るしかないもの

のだめカンタービレ スペシャルBEST!
のだめカンタービレ スペシャルBEST!
のだめカンタービレ, のだめオーケストラ, プラハ放送交響楽団, エレット(パヴェル), 日本フィルハーモニー交響楽団, 三輪郁, 野原みどり, 茂木大輔, 若林顕, 沼光絵理佳

大学時代の後輩が、「のだめカンタービレ」のお正月特番を録画してこちらに送ってくれました。ユーチューブで細切れには見ていたのですが、届いたその日と、翌日に、さっそく見ちゃいました。ユーチューブもいいけれど、やっぱりテレビで見なくっちゃ!!

今回は千秋の指揮者コンクールと、のだめがコンセルバトワールに入学してから初リサイタルを終えるまでがメインのお話でした。

ヨーロッパに来て、ふたりには、強力なライバルが現れます。指揮のコンクールではジャン、のだめには中国人ピアニストの孫ルイ。まあライバルといっても「ガラスの仮面」の北島マヤ姫川亜弓みたいな宿命のライバルってわけじゃなく、同じ分野で頑張っていて才能があって、少し自分の先をいっている同年代の人ってだけなんですが。

千秋ものだめも、それぞれジャンとルイを意識して自分を見失っていきます。あれだけマイペースで、楽しければいいじゃないと開き直っていたのだめでも、やっぱりコンセルバトワールで初見やアナリーゼについていけず子ども以下とか、レッスンで「ぜんぜんダメ」といわれ、落ち込むんだなあと妙に感心。いつもパーフェクトな千秋も、ボロボロに酔っ払って荒れている姿が気の毒なくらい。

でも、そこから、のだめも千秋も、自分でなんとかひとりで立ち上がってまた頑張るんですね。

ピアノも語学も、仕事も家事も育児も、それこそ病気も、ああほんとうに、他人に誰かかわってもらいたい…と思うことが多々あり(笑)、それは誰もが一緒なわけですが。でもどんなに他人が「かわってあげたい」と思ってもかわれないものがやっぱりあって。子どもの病気なんかその代表ですね。語学にしろピアノにしろ、どれだけヘタでも自分で一歩ずつ踏み出さないとまったく前に進まない。本を書くのもそう。新しい土地や学校に行ったときの孤独。なんでもそう。

もうだめだ、逃げたい、どうしていいかわからない、と思ったときに、千秋は酔っ払って寝て、のだめは何をしていたのかわからないけれど髪がボサボサのヨレヨレな姿になって号泣。そこからどうやって立ち直るのか、という描写が「のだめ」の面白いところです。

千秋は、片平さんのジャンプ入りの面白い指揮を見て、のだめは教会でモーツァルトの合唱を聴いて。もちろんそのイベントひとつで復活できるような甘い展開でもなく、だけどあとで思い出すとあの出来事がひとつきっかけになって少しずつ上向きに地道に歩き始められたなあ、みたいな感じが、とてもうまくドラマの中に描かれていました。

友達や親や周りの人たちは、当たり前だけどかわりに試験を受けたり演奏したりコンクールを受けたりはできないわけで、自分で乗り越えるしかない。当たり前なんだけど、その厳しさがありながら、でもやっぱりまわりで支えてくれる支えあっている友達や家族の力も、とても大きい。

きわめて当たり前のことといってしまえばそれまでですけど、ステージで拍手を浴びる指揮者にピアニストの晴れ姿はあまりにもまぶしく、そうした日々のもろもろがあっての晴れ姿であるということが実感しづらいんですよね。あまりに実感されすぎても、今度は夢がなくなっちゃうし。これまでにも書いてきたけれど、やっぱり「のだめ」のいいところは、ドラマだから、
晴れ姿以前のボロボロな状態を見事に描いているところ。ほんとうに真実味があるし、勇気がもらえます。誰にもかわってもらえないものを、みんなが背負って歩いている。どんなにみじめに思えて情けなくても、自分で一歩一歩進んでいくしかないのだと。

新春特番から話がズレますが、こちらに住む日本人駐在員のママ友達で、日ごろあまりテレビを見ないという人が、台湾人のママ友から「これ日本のドラマですっごく面白いのよ。見てないの? 貸してあげる」といって台湾語の字幕入り、音声は日本のまんまの「のだめ」ドラマを借りて、「すっごく面白かった」と言っていました。

台湾やほかの国でどれだけ「のだめ」がはやっているのかはわかりませんが、キャプテン翼を見て育ったサッカー選手が日本だけでなくヨーロッパにも沢山いるように、「のだめ」を見て育った音楽家が世界じゅうから出てくる日が来るかも?

ぜんぜん演奏のことを書きませんでしたが、いやあ、今回もいい曲ぞろいでため息が出ましたね。ラヴェルの「道化師の朝の歌」が好きなので嬉しかったし、モーツァルトオーボエ四重奏曲がしみじみ心に染み入ってきたし、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲もなんだか泣けたし、そうそう、のだめが作った「もじゃもじゃ組曲」があまりに素敵なのでびっくり、「こんな曲だったのっ!?」…アマゾンでCDの曲目のところを見たら、あれは大島ミチルさんが作曲したみたいですね。「道化師の朝の歌」は野原みどりさんの演奏で、鬼才として知られる上野真さんの「マゼッパ」もひかれるー。そうそう、指揮者コンクールでの間違い探し、私はただ聴いていてもぜんぜんわかりませんでした。あれってホントに違ってるんですよねえ。スコアとCD、首っ引きで間違い探しをやってみたい衝動に駆られてきた…。このCD買ってしまおうかなあ。