音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

セミナースケジュールはこちらです。 山本美芽オフィシャルサイト

ピアニストの懐事情

音楽業界に入るまで、「ピアニストって儲かる仕事なんだろうな」と思っていましたが、というよりは「お金持ちの人がピアニストになっている」といったほうが正しい、ということがだんだんわかってきました。

要するに、ものすごく儲からなくて持ち出しが多くて、「鶴の恩返し」じゃないですけど、音楽へのものすごい愛情があって、音楽家自身の多大な犠牲のもとにコンサートが開かれCDがリリースされ続けているのが現状だということです。

とはいえ夢を売る仕事のピアニストの方々について、私ごときライターがごちゃごちゃとあれこれ書くのも失礼だし、この話題は読者の方々に知って欲しいと願いつつも書きあぐねてきました。

それが、きのうピアニスト・文筆家として知られる青柳いづみこさんのサイトで日記を読んでいたら、うわ、まさに、ずばりな記述がてんこもり。
 出版業界と音楽業界の格差について、両方の世界で活躍される青柳さんだからご存知な事実が赤裸々に綴られています。

本文から衝撃的な箇所をいくつか引用させていただきましょう。

「出版界の最低部数3千に対して、レコード業界の最低枚数は千枚(最近ではどんどん下がり、数百枚が実情らしい)。」

 ちなみに私が出した本のなかで一番部数が多いのが2万、一番少ないものが4000です。

「最初にドビュッシーのCDを出したいと思ったとき、いろいろなレコード会社に話をきいたが、ある大手から、3千枚プレスするのでそのうち2千枚は買い取ってほしいとこともなげに言われた。この「買い取り枚数」は誰もつまびらかにしないのではっきりしたことはわからないが、業界の常識なんだそうだ」

 私は自分の本の買取はやりましたが、それは義務ではありませんでした…

「アーティストの自助努力のおかげで何とか成り立っている業界というのは、本当は成り立っていないのだ。でも、アーティストにもプライドがあるから、そのあたりの事情は明かさない。謙虚に、音楽の神様に奉仕し、謙虚に自己批判し、謙虚に日々努力していく」

 結局、持ち出した分をレッスン料でまなっているピアニストが多いのが現状でしょう。

 ライターの場合はレッスンで稼げないので、トータルとしては多分ライターのほうが苦しいと思いますが、しかし「作品」に対してお金を払うシステムとしては、出版業界のほうがずっと整っている。その出版業界にいても、みんなぎりぎりのところで食いしばっているわけで、そうなるとクラシックの音楽業界というのは…。

 といった具合に、まだまだ引用したい箇所が10箇所ぐらいあるんですがきりがないのでこのへんで。

 ああもう、読んでいて、よくぞ書いてくださった、激しく同意!!! とはこのことです。これ、青柳さんがお書きになっているそのまんま。構造的な根深い問題です。

 現実問題として「じゃあどうすれば?」というのがあって、私としては「とりあえずCDに関してはitunesで売り出す方向性を考えてみては?」とか、「ピアニストがユーチューブにリサイタルの映像を流してみんなに宣伝してみては?」ぐらいしか思いつかないんですけど、とにかく音楽を愛する人は、この現状を知ってほしい、知るべきです。

http://ondine-i.net/merde/index.html
青柳いづみこさんの日記
 
2007年9月20日/ビーイングの仕事 の最後の方を読んでみてください。