音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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霧と潮騒のメンドシノ

サンフランシスコから北に向かっておよそ3時間半の距離に、メンドシノという街があります。ハーフムーンベイの涼しさが忘れられず、またしても避暑を兼ねてそこまで行って来ました。

海の近くまで、険しい山が続き、レッドウッドという針葉樹の巨木がびっしり茂っています。山からアクセスするならば、深い深い森林を越えて、海からならば崖ぞいの美しい眺めだけれどかなり怖いくねくね道を通っていかなければなりません。

このレッドウッドを出荷するために、19世紀にメンドシノの街ができました。ニューイングランドスタイル、ビクトリア調のかわいらしいパステルカラーの建物が続く町並みです。20世紀に入って材木業が衰退しましたが、自然と建物の美しさから、ベイエリアからの観光客でにぎわう街となり、現在に至っています。

海からも、山からも、険しい道を越えていかなければならない、なんという不便さ。でも、だからこそ、訪れる人も少なく、開発されておらず、すばらしい雰囲気が保たれているのでしょう。

海沿いにはずっと崖が続いていて、ところどころ崖を下りていくと砂浜に出られるようになっています。海沿いには、大きな岩が海中からにょきにょきと顔を出していて、岩にぶつかって砕ける波がレースのように白く輝いています。

モントレーやカーメル、ハーフムーンベイに比べて、あまりにも田舎で、人がいません。大きなチェーンのホテルもぜんぜんないのです。スーパーだって、fort braggという街にセーフウェイという中型スーパーとか、いくつか「あっこれうちの近くにもある」というような大きなお店は3−4軒ほど。メンドシノには、その類のチェーン店すらなく、こぢんまりしたスーパーがあるだけ。

ほんとうに静かな海を、ひっそりと味わうことができました。

しかも猛烈に涼しいー。山越えするまでは40度近くあった気温が、山を越えて海側に入ったら、一気に15度から20度ぐらいに下がりました。

夜、そして朝には霧が出て、樹齢100-200年と思われるみごとな枝ぶりの松林が白くけむっていました。

宿は、海の近くにある「オーベルジュ メンドシノ」というB&Bに泊まりました。フレンチカントリーの可愛らしいインテリアにうっとり。どの部屋にも暖炉があり、松林に囲まれた広い芝生の庭、その片隅には薪割りエリアが。朝食に行くと、ちゃんと暖炉が燃えていました。そう、朝は、暖炉を燃やしてもちょうど良いぐらいの気温なんですよ。ひえー!!!

便利で早くてちょっとがさつ? なアメリカだけでない、繊細ものを愛する感性がインテリアや食事など、あちらこちらに漂っている宿でした。

朝起きて、海まで草むらのなかを歩いていくと、ブラックベリーがたくさん生えていて、実がついていました。かじってみると、甘ずっぱくておいしい! 

メンドシノには、海が見えるバケーションホーム(貸し別荘)も結構あるみたいなので、いつかそういう場所を確保して、のんびりすごしたいものです。

とにかく開発されていないメンドシノですが、それでいてフレンチのすばらしいお店や、ギャラリーがたくさんあるのです。ベイエリアの目が肥えたうるさいお客さんを相手にして、堂々とビジネスをしているレベルの高さに、ため息です。

帰り道、山を越えたらまた40度近い暑さに戻ってしまいました。
霧に包まれたメンドシノの砂浜…あれは、夢だったのかも。なんて、不思議な感覚に襲われました。