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音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

セミナースケジュールはこちらです。 山本美芽オフィシャルサイト

上原ひろみ@oakland Yoshis's 2007年5月5日 1st

日本のジャズ・フュージョン

タイム・コントロール
タイム・コントロール
上原ひろみ~Hiromi’s Sonicbloom

アノトリオにギターを加えたカルテット編成で、上原ひろみちゃんのコンサートがあったので行って来ました。

これまで彼女にはもちろん注目していましたが、前作まではどうもジャズ寄りで私にはいまひとつ「ライブ行かなきゃ」というエンジンがかからなかったのです。しかし新作「タイム・コントロール」は、デビッド・フュージンスキーという鬼才ギタリストを入れて、私から見ればフュージョン寄りのエレクトリックで決めの多いサウンド。思わず、にわかひろみファンになってしまった次第なのです。

彼女の演奏はテレビなどでは沢山聴いています。いやしかし、生で間近に見て、いやはやもう圧倒されてしまいました。なにがって、やっぱりまず驚かされるのはあの超絶テクニック。1音1音からレーザービームが出ているみたいに磨きぬかれて、輝いて、空間を切り裂くようなものすごいパワーです。しかもピアニッシモになればなるほど音の瞬発力が際立っている。なんというテクニックじゃ、と感心を通り越して呆然。鋼のような音の大洪水を浴びて、こちらもがんがんハイになってきます。

と、ライブということもありテクニックに度肝を抜かれつつも、結局聴き手の意識をひきつけているのは彼女の曲の良さがなせる業であることに気がつきます。やっていることは音楽的に非常に高度で理屈としてはめちゃくちゃ難しいはずなんだけれど、なぜか聴きやすい。

そうやってひきつけられるのは、みごとな構成であり、緩急であり、音色の多彩さであり、バンド全体の突っ走り具合、各メンバーの役割分担も見事。

しかしねえ、これだけ超人的にピアノが弾けるのに、なんでエレキギターを入れて、キーボードを3台使わなくっちゃいけないのよ? という素朴な疑問が湧いてきます。すでにひろみファンの間では有名な「ノード君」もしかと拝見してきました。ピアノの上にに2台、そしてピアノの90度横にもう一台、キーボードを使ってましたね。

これだけパワフルな音を持っているのに、ピアノトリオだけでも充分じゃないの? ・・・なんだけど、メロディの要の部分でギターがぎゅいーんと伸びのある音を聞かせたり、長い持続音をキーボードで「みょ〜ん」と弾いている、そしてその音が実に気持ちよくはまっているのを聞くと、あーこの感じは、ピアノではどんな超絶テクニックをもってしてもピアノでは構造上出せないできないな、減衰しない音が彼女の世界に必要なのだ、と思いました。

そうしたエネルギッシュな「持続音」があればあるほど、ひろみちゃんの鋼のように輝かしいタッチで弾かれる高速変態フレーズに、えんえんと続くアドリブ、ギターやベース、ドラムと一体になって突っ走る決めのフレーズがどきっとするほど際立って鮮烈に感じられます。たぶん、ピアノトリオ編成でエレキやキーボードを入れていなかったら、おそらく彼女の指がピアノの鍵盤の上を走り始めたときの「まってました」「きたよきたよ」的な安堵感を、あれほど強く感じることはないでしょう。

それと特筆すべきは、ほんとうに楽器とたわむれている状態そのものの楽しそうな表情。それこそ彼女を見ると、世の中には本当に「のだめ」みたいにピアノを弾くひとがいるんだというわかります。ひろみちゃんは理論も作曲も譜面もばりばりこなす天才だから、作曲理論に苦労しているのだめを引き合いに出したらもしかしたら失礼かもしれないのだけれど。でも、演奏中の「ねーねーいいでしょーこの音〜」とか「これでどうだ!!」とか「いくぞっ」とか、顔に書いてあるようなあの表情。(←すいませんセリフは私の勝手な想像です)

やっぱり一流の音楽家というのは、音楽で思いっきり遊んでいて、それが芸術になっている人たちなのだと確信して帰ってきました。

ひろみちゃんのブログはライブの模様が写真で載っています。

http://www.frontpage.co.jp/hiromi_uehara/blog/