音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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なぜ活動休止に?@カシオペア

CASIOPEA with Synchronized DNA / 5 STARS LIVE
CASIOPEA with Synchronized DNA / 5 STARS LIVE

思えば、このライブの収録のときに、向谷さんがMCで「こんなバンドがあったと映像で残してみようかなぁ、と」っておっしゃっていました。もしかしてあのときすでに、今回の休止は決まっていたのでしょうか。深読み?

聞いた瞬間はどうしてどうして、と思いましたが、ここ10年ほど何度もインタビューをさせていただきライブも欠かさず行き、楽屋にも入れていただいてずっと間近に活動を見てきたこともあり、休止を決めた野呂さんのお気持ちもわかるような気がします。

あくまで、私の推測なのですが・・・

野呂さんは25年以上もリーダーとしてやってこられて、アルバムを作るときも曲の大半を書き、コンサートとなれば曲順まで全部決めていました。そして日本にも外国にもファンがいて、メンバーやスタッフの生活も背負っていた。ものすごい「期待」と「責任」が、野呂さんの曲づくりにかかってきたわけです。

活動休止宣言なんてしないで、いつのまにかコンサートがなくなりアルバムリリースがなくなり、というフェードアウト式に引退している人はいくらでもいます。だけどあえて野呂さんはフェードアウトではなく、活動休止として発表された。そこに、ライブやアルバムを楽しみに待っていてもらっても応えられないから申し訳ないから、そこはきちんと伝えておかないと、という誠意を感じました。

日本では1月、そして6月の韓国のコンサートが最後の活動だったということからは、「有終の美を飾りたい」というのも変ですが、尻すぼみな時期ではなく、「どうして」と驚かれ惜しまれる時期に区切りをつけたかったのでは、と想像します。納得いくアルバムができ、コンサートができたからこそ、踏み切れたのかもしれません。

音楽は「義務」になると、ものすごい苦痛になります。もちろん野呂さんほどの音楽家だったら、どんな状況でも楽しんで音楽をされてきたに違いありませんが、でも、カシオペアを続けている限り、良い意味なんですけれど責任が発生するわけです。バンドのメンバーがいるからこそ自由になれる場合もあれば、バンドを休止することで自由になれる場合もあります。もしかしたら後者のほうに傾いていたのでは。

 私自身、実際にいま充電中なので、「休む」ことの素晴らしさはよくわかるのです。雑誌の仕事をほとんどお休みにして英語の勉強に好きなCDを丁寧に聞き込み、じっくり単行本を書く毎日。これまで見えなかった世界が見えてきました。

 つらつらと思うことを書いてしまいましたが、ほんとうのところは全然ちがう理由が決定打になっていたのかもしれませし、わかりません。

 ひとつ今回のことで私が痛感するのは、音楽家がコンサートをしたりアルバムをつくるのって当たり前のように感じがちだけれど、それこそ命を削って血を吐くような思いで―それを「お仕事」としてではなく、楽しんでやっていても、もしかして楽しんでいるからこそ、作品を完成させる側は身を削る思いをしている、ということです。

 カシオペアの活動が今後あろうとなかろうと、メンバーのみなさんが今後長い目でみたとき、よいコンディションで素晴らしい音楽活動をされるよう祈るばかりです。まずはゆっくり休んでいただきたいです。

 これまでの人生で、「もうすぐカシオペアのコンサートだ!」とか「もうすぐアルバムリリースだ!」と、どれだけのワクワクした気持ちをカシオペアにもらったことか。コンサートで演奏を聴く時間は、どれだけ素晴らしいものだったか。難しいけれど魅力的なカシオペアの曲をピアノでなぞるのは、どれだけエキサイティングだったか。

 たくさんの宝物をカシオペアにもらいました。野呂さん、向谷さん、鳴瀬さん、そして神保さんも、ほんとうにお疲れ様でした。素晴らしい音楽と素晴らしい時間をありがとう。