音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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T-スクェア 芝メルパルクホール 7/3 

 新ドラマー坂東慧さん、そして新しいサポート・ベーシストの田中晋吾さん
が入って、新しくなったスクェアのホール公演でした。

 いや〜盛り上がりました。ちょっと驚き。
 
 今思えば、和泉さんと本田さんが抜けたあとから、ライヴの客席にひややかな空気がいつも残っていたような気がするんです。より新しく、より進化したスクェアを目指してチャレンジを続けるメンバーの気持ちは大事にしてあげたい、新しい試みも確かに楽しい、でも自分が好きな往年のスクェア・サウンドがもっともっと聴きたい気持ちがやっぱりある、そう思うのって自分勝手なことなのかなあ、みたいな。

 もちろん、それなりに盛り上がったり楽しかったり、良い演奏がたくさんありましたが、どこか、そういうすれ違いがずーっとあった気がする。

  「期間限定」として、旧メンバーが集結したときに、いったんあの冷ややかさは消えました。「これが聞きたかった」という喜びが客席にあふれていた。

 そして期間が過ぎて、新しいメンバーとしてまたスクェアは活動しはじめて、スクェアらしさを目指してアルバムをつくったわけです。

 現メンバーのキーボード河野さんと坂東さんは、歴代メンバーのテイストの再現にものすごく心を砕いていました。ひとりのミュージシャンとしてのカリスマ性を見せるよりも、スクェア・サウンドに自分をなじませてしまった。そしてそれが、ファンに強く受け入れられた現場を見た気がしました。

 クラシックの世界では、個性がどうのこうのというより、作曲家ごとのスタイルを身につけているかどうかが問われるものです。でも逆に、ジャズ・フュージョンの世界では、自分が作曲家になっちゃて、自分らしさを打ち出したほうが評価を受けやすい気がします。しかし今回スクェアに入ったメンバーは、あえてクラシックのように、できあがったスタイルを徹底的に吸収したわけですね。

 宮崎さん、松本さんといった、本田・和泉後に活躍したおふたりは、それぞれすでにミュージシャンとしての個性を持っていて、そのあとにスクェアの音楽を演奏しはじめたタイプでした。あのふたりがいた時代の「スイート・アンド・ジェントル」なんて大好きでしたよ。

 別に往年のスクェア・サウンドを再現するためにバンドやってるわけじゃないし、あくまで発展的なものとして楽しみたい人がファンやってればいいんじゃないの? と私自身思っていたんです。

 ところが、坂東君と河野さん、そして田中さんが入った新生スクェアは…往年のスクェアサウンドが聴きたいというファン心理に、みごとにマッチしていました。「えっ、そういうのやってくれるの? いいの?」という感激。新曲もあるのだけれど、なぜかそれも往年のサウンドに溶け込んじゃってる。

 私自身、スクェアの大好きなフレーズというのが沢山あって、ライヴでそれをそっくりコピーして演奏してくれたりすると、もう無条件に嬉しくなってしまうのです。「ここ、好きなんだよね」という気持ちが、ステージと客席でつながったような気がして。

 坂東君や河野さんみたいに、ファンと同じか、それ以上に聴き込んできた人は、何かがやっぱり違う。上手で正確な人が着てくれるなら誰でもいいというものでは決してなくて、ファンがどこをどうすると「いいな」と思うのか、その微妙なポイントを、自分自身の感覚としてもっているミュージシャンが、絶大な支持を得るのだなと思いました。

 25年以上も伝統のあるバンドになると、もうクラシックに近い「スタイル」があるわけで、上手いとか個性があるだけじゃなくて、スタイルを身につけていることが聴衆の支持を得る・・・現象として、面白いですね。
 
大好きな河野さんの曲「フューチャー・メイズ」が、ちょっと遅く感じたのはなぜだろう・・・シーケンサーにあわせたから、盛り上がってもテンポを上げられなかったのが原因なんでしょうか。もっと猛スピードで飛ばしてほしかったな(笑)。でも、4回目のアンコールでやってくれたリトル・マーメイドなんかは、ゆったりしたノリがとても気持ちよかった。そうそう、坂東君の曲で伊東さんが初代EWIを吹いていましたが、すごく吹きにくそうでした(笑)でもあの吹きにくさが味があるんだなあ。それから、安藤さんのベンチャーズギターことモズライト、あれはいい! 今回限りじゃなくて、また使ってほしいなあ。

この日のライヴはBSフジで放映されたのち、DVDになるそうです。クラブ・サーキットとして全国のライヴハウスをまわったあとの演奏だから、バンドとしてもまとまってましたね。楽しみ楽しみ。