音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

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マチス展

 銀座で取材があり、終わってから1時間弱ですが時間がとれたので、ダッシュで上野の西洋美術館へ「マチス展」を見にいってきました。http://event.yomiuri.co.jp/matisse/
 マチスなんて昔はぜんぜん興味がなかったのです。きっかけは、10年ほど前の学生時代に、叔母を訪ねてパリに行きまして。オルセーにルーブル、マルモッタンにオランジュリー、そしてポンピドーセンターと美術館めぐりをしたわけです。ポンピドーセンターの目玉がマチスでした。そして、南仏のニースにも行きまして、こちらでもマチスの絵をいろいろ見て。当時私はモネとかルノワールのような、ほわ〜んとしたやさしいタッチ、やさしい色合いの絵が好きだったので、マチスのように原色でコントラストの激しいものは、特にひかれるっていうこともなかったのです。最初は「ふ〜ん」って感じでしたが、その後何年かたつうちに、だんだん「いいかも・・・」、そして最近は「なんだかひかれる!!」というようになってきたのでした。
 今回の展覧会は、パリのポンピドーセンターから持ってきたものを中心に、個人蔵の絵など、けっこう充実していました。生マチスなんて見るのは、パリに旅行して以来ですから、それこそ10年ぶりぐらいです。よかったのは、晩年に手が不自由になってからはじめた切り絵の「ブルー・ヌード」。真っ白い背景に、デフォルメされた女性のシルエットが群青色の紙を切り抜いて張られています。何がいいのか、うまくいえないんだけど、ものすごいインパクト、ひかれるものを感じました。同じく切り絵の「ジャズ」も、不思議なインパクトで忘れられないです。
 あとは、絵画のほうですが「ルーマニアのブラウス」。今回の展覧会では、マチスがこの絵を12月から4月まで、えんえんとあーでもないこーでもないと、構図をいじりまくってバージョンを重ね続けた模様を写真に撮ったものが展示されていました。彼の場合は特に、できあがり図が最初にイメージされていて、それを描いていくなんて、そんなシステマティックなもんじゃなくて、対象を描きながら考えるんですね。
 私事ながら、ライターの場合も、本の設計図や目次を最初にちゃんと考えて、そのとおりきちっと進んでいけば苦労はないんでしょうし量産もできるんでしょうが、私の場合とくに本に関しては、もう完璧にマチス型(笑)。どうなるかもわからず、書きながら考えて、削ったり捨てたり書き直したり、結論さえも書きながら変化していく。こういうスタイルってどうなのよ? けっして効率よくないよね? ・・・と、自分であまり好きではなかったのですが、私の好きなマチスが、そういうスタイルだったと知って、なんだかうれしくなりました。
 それにしても、マチスの赤は独特の深い色合い。絵の背景が赤、というのがとても目についた気がします。そこに黒い線でラインが描かれていると、ほんとうに「あーこれマチスだよね」という感じ。色そのものが、すでに彼のスタイルなんですね。