音楽センスを伸ばしたい!

音楽ライター山本美芽による、ピアノレッスンに関する取材日記です。

セミナースケジュールはこちらです。 山本美芽オフィシャルサイト

キース・ジャレット東京コンサート。ただただ「すごすぎる」

 日本では12年ぶりとなったジャズピアニスト、キース・ジャレットのソロコンサートに行ってきました。東京文化会館はリニューアルされて明るくなっていて、ロビーは贅沢に空間を使った高さと広さが生きて、すごくモダンな雰囲気。肩や背中を思い切って出したドレスが似合いそうな空間。開演前からものすごい人でごったがえしています。入口にはダフ屋まで出ていて、このコンサートへの尋常ならざる注目度や期待といったものを改めて感じました。

 キースはサングラスをして出てきました。そして弾き始めた曲は、すべて即興・・・なんですよね。わかってはいても、何がどうなってこういう演奏が即興で出てくるのか、聴きながら見ながら信じられない思いでした。だんだん、はじめて聴くクラシックの曲を聴いているような気分になって、ときおりキースが発する「うなり声」で「あっ、そうだった。これは即興なんだわ」と我に返る。そんな感じでした。

 キースのCD、たとえば「パリ・コンサート」のように1曲が何十分もずっと続くのではなく、いくつかの曲に分かれていました。非常にクラシカルな演奏も少なくなく、聴いているうちにバッハ? 印象派? ベートーヴェン? 現代音楽? そしてブルース。 ・・・など、いろいろなスタイルのエッセンスも感じられました。

 ピアニッシモでもひとつとして濁らずかすれず、音が耳まで迫ってくる見事なタッチ。曲ごとにガラリと変わる音色、雰囲気。時代、スタイル、テンポ、楽譜、・・・そうしたピアニストを縛る一切のものから自由になって、しかも聴衆を引きつけて離さないクオリティであり続けるという奇跡。そんな場所に身をおいているうちに、私自身もすごく自由な気分になっていました。

 CDで聴いて「これが即興なの!? スゴイ」、などと感嘆するのと、コンサート会場で、目の前でそれが「起こる」のでは、天と地ほどの違いがありました。奇跡を体験した衝撃。究極のコンサートを聴き終えたあとの状態は「至福」のひとことでした。